Special Reprt

第5回

女性管理職たちが 互いに背中を見せ合う

存在にならないといけない

日立ソリューションズ(東京・品川区)

日立ソリューションズで、「ダイバーシティ推進センタ」が専門組織としてスタートしたのは2009年のことです。当初は、男女の雇用均等から次世代育成をめぐり、数々の法改正がなされたことに対応するものでしたが、この専任組織を立ち上げて以降、従来の制度や運用方法を見直し、多様な人財の違いを生かす経営戦略へと変化してきました。現在では、グローバルな視点も取り入れ、本当の意味でのダイバーシティ経営をめざしています。女性の活躍にかぎってみると、同社の女性管理職は全体の4%に満たない状態。その数を増やすためには、それぞれの事業部主体の女性管理職を中心とした取り組みと、会社全体での次世代を育成するための取り組みが必要と考えています。
今回は、ダイバーシティ推進センタ長・ 小嶋美代子さんにお話をうかがい、さらに各事業部でダイバーシティを推進する2名の女性管理職とスタッフ部門の女性管理職の方々にもお話に加わってもらいました。
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管理職の生の声を次世代に発信する

小嶋さんが、2代目センタ長として日立ソリューションズのダイバーシティ施策を受け継ぐことになったのは2012年のこと。今年で4年になる。
「着任当時、すでに仕事と育児を両立するための働きやすい職場環境は整備されつつありました。そこで、次のステップとして、『女性活躍』を進めていこうと考えました」。
ダイバーシティ推進センタが中心となって取り組んだのが、トップからのメッセージ発信や複数の企業と連携した共同イベントの開催、女性社員の育成計画の策定などだった。また、最近では、女性管理職の声を集めた冊子も制作している。
「管理職一歩手前の女性たちに向けて、自分たちの会社の女性管理職の『声』を発信することが目的です。社外の有識者を招いて話を聴く機会もつくりましたが、距離の近い先輩女性管理職の生の声が大切じゃないかと考えました。バリバリ働いてキャリアを築いたのではなく、むしろ、悩みながらもチャレンジしてきたことも伝えるべきだと感じたんです」。
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ダイバーシティ推進センタ長・ 小嶋美代子さん

女性管理職の成長が、女性活躍をリードする

「女性活躍」への取り組みは、ダイバーシティ推進センタと連携し、それぞれの事業部の中でも、主体的に取り組みが行われている。
「各事業部内で女性活躍の成功事例をつくっていってほしいと思っています。それが全社を大きく変えることにつながると考えているからです。その成功事例とは、女性管理職たちがそれぞれに成長することです。ダイバーシティが組織や社員一人ひとりに十分に浸透し、『ダイバーシティ推進センタはもういらない部署だよね』と、言われて解散になることが、ある意味で私たちのゴールなんですね」。
701日立ソリューション 043-2 佐藤千史さん(ITプラットフォーム事業部 部長代理)から
「部下に対する評価が、一番の悩みどころでした。というのも、私自身が能力とは違う部分で、『子育て中は活躍を期待してはいけない』、『責任のある仕事を任せられない』と言われたことがあったからです。そこで、成果や能力の評価と、ライフイベントごとのアドバイスを分けて考えるようにしました。さらに期待していることも伝えました。すると、翌日から部下の行動が明らかに変わったんです。こんなポテンシャルを秘めていたんだと、嬉しくなりました」。

701日立ソリューション 042-2 中西真生子さん(通信・メディアシステム事業部 主任技師)から
「『中西さんのようになりたい』と、そう言ってくれる後輩の女性がいることを知りました。驚いたけれど、自分の頑張りを見ている人がいることを嬉しく思い、それで意識が変わりました。どこか遠慮していたこれまでに比べて、積極的に発言するようになりました。それが後に続く女性たちのモチベーションにもなると良いかなと思っています。また、管理職になる女性は特別だと思っている後輩も多いと感じています。だから私は、管理職だって悩むし、迷うときもあるという姿をもっと見せたいと思っています」。

701日立ソリューション 045-2 安藤雅代さん(経営企画本部 部長代理)から
「自分の成果に集中するプレイヤー時代と違い、管理職は部下の育成が大切な役割。大切なのが日頃からのコミュニケーションです。年に4回ある面談の時だけでなく、日常の中で声をかけること、褒めることが大切だと思いますね」。

大切なのは相手を間違えないこと

会社が、女性たちの働きやすい職場を考えるときに、ついやってしまうのが『働きづらい』と考えている人たちの声に耳を傾けすぎてしまうことだ。それは大きな落とし穴だと小嶋さんはいう。
「誤解を恐れずにいうと、すべての女性たちを支援しようとしないこと。たとえば女性のチャレンジを促進する場合、外側から『チャレンジしてください』と言っていた時代には、チャレンジする人がほとんどいなかったという経験をしました。そうではなく、制度があろうとなかろうと、チャレンジしたいと思っている人たちの声に耳を傾け、ダイバーシティ推進センタ自身もチャレンジしていく。そういう姿を見せることも、企業の役割として大切です」。

701日立ソリューション 043-2 佐藤さんから
「私も部下たちに背中を見せることの大切さを痛感しています。娘が保育園に通っているときに、竹馬に乗るという課題がありました。たくさん練習したんでしょう。娘の足は、傷だらけでした。『そんなに頑張らなくてもいいよ』、という私に娘が言いました。『これは私の仕事よ。私が頑張るって決めたんだから、頑張るの。ウチの家族は、一歩家を出たら、みんな頑張ってるもんね』。ちゃんと背中を見ているんだなって、感激しました。部下だって同じです。『大変そうだけど、あんな風になりたい』そう思われるように、頑張る姿を見せたいです」。
「3年ほど前から、部門でのダイバーシティ推進にも関わっています。『ダイバーシティ経営をする』ということはどういうことなのか、そのために私たちに欠けているものは何なのか、とたくさん考え、理解しているつもりでした。
管理職という役割になり、ふと思ったのです。『自分の中にどんな多様性があるだろうか?』、『周りにある多様性を受け入れて生かす力はどれくらいあるのだろうか?』と。小嶋に相談してみたら、『話し方は?』、『経営については?』、『芸術はどう?』、とたくさんのキーワードを提示されて、『これは学ばないといけないぞ』という気持ちになりました。
2~3人でもいいから、とにかく学びの場をつくろう、背中を押し合って、学び続けよう、そして、自分の中にたくさんの多様性を作り、キラキラと輝いて後輩たちから一粒のダイヤのように見られるようになろう、と自主的な学びの場を作りました。今、13名の仲間とともに、毎回たくさんの新鮮な刺激を受けています」。
「次世代の人たちに伝えたいのは、『チャンスを一緒に掴みにいこう』ということ。チャンスは待っていればやってくると思った時点で、そこにチャレンジはありません。私たちもチャレンジするから、一緒にチャンスを掴みにいこう、一緒にチャレンジしていこう・・・そう言いたいです」(小嶋さん)。
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今さら聞けないと思うようなことも一から学び直すことができる自主的な勉強会「ABC Learning」。宝石のように、ブリリアントカットのように、輝きたいという野心(Ambition for Brilliant Cut)を持つ集まりでもある

701日立ソリューション 042-2中西さんから
「今の時代、何かチャンスを与えられても躊躇してしまう人たちが多いような気がします。『よくそんな仕事を引き受けたね』って言われたこともありますが、もちろん私にも不安はあります。でも、“来るものは拒まず”という精神で受けることが大事だと思うんです。たとえ成果が100点ではなくても、前に進まないことはない、ということを伝えたいですね」。

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後輩とのミーティング。事業部内の課題解決に向け、これまでの現場での経験を生かして積極的に意見を吸い上げている。

701日立ソリューション 045-2 安藤さんから
「これから働き方はどんどん変わっていきます。狭い会社の中だけで物事を捉えてしまうのはすごくもったいないと思っています。社内外の人たちと交流を持ち、知識の幅を広げることが武器になる。そんなチャレンジをしてほしいなって思いますね」。

お互いの背中を見せ合う大切さ

小嶋さんがこんな言葉で締めくくってくれた。
「これからの若い世代に、いろんな背中があることを見せていきたい。日立ソリューションズには日立グループの国内企業で初めての女性執行役員がいます(富永由加里氏=日立ソリューションズ常務執行役員)。私たちは若い頃から、彼女の背中を見続けてきました。これからは、一人の背中じゃなくて、『あんな背中もある』、『こんな背中もある』って見せていくことが大切だと思っています。だからこそ女性管理職たちは、互いに背中を見せ合うような存在にならないといけないですね」。

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労政部 ダイバーシティ推進センタ・センタ長
小嶋美代子(こじまみよこ)氏
2013年10月より現職

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ITプラットフォーム事業部 QTATソリューション化推進部 部長代理
佐藤千文(さとうちふみ)氏
2015年10月より現職

701日立ソリューション 042-2

通信・メディアシステム事業部 通信アプリケーション基盤本部 第1部 主任技師
中西真生子(なかにしまきこ)氏
2014年10月より現職

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経営企画本部 広報・宣伝部 部長代理
安藤雅代(あんどうまさよ)氏
2014年4月より現職

※取材ご希望がありましたらご遠慮なくお寄せください。

(Report 高谷麻夕)

株式会社日立ソリューションズ(Hitachi Solutions, Ltd.)
設立:1970年(昭和45年)9月21日
従業員数:4,900人 (単体・2016年3月31日現在)
主な事業内容:
ソフトウェア・サービス事業、情報処理機器販売事業随事業