第1回
女性活躍をサポートする会社は
女性が活躍している会社だった
カラーズ(東京・港区)
女性活躍、ダイバーシティ、育メン、女性管理職30%構想、ワークライフバランス…仕事をがんばる女性たちへの期待が高まるなかで、女性の仕事人生(キャリア)をとりまく動きが連日、新聞、テレビ、ネットで躍っています。この「女性が活躍する会社」シリーズは、仕事をがんばる女性の働く場所をテーマとしてレポートしてまいります。活躍する女性たちの仕事ぶりはもちろんですが、なぜその会社では女性たちが活躍できるのか。会社はそのためにどんなサポートをしているのか。そんなアングルも持ってみたいと思います。第1回は新しいかたちの女性支援で注目の株式会社カラーズです。
㈱カラーズの新しいビジネスモデルはインターネットを活用した女性支援事業である。働く女性にとって、仕事と出産や育児との両立は大きな試練となる。そこにフレキシブルに利用できるベビーシッターによる育児支援サービスがあれば、一人で も多くの女性の活躍が応援できると考えた。お子さんをもつ女性が社会で働きやすいことは言うまでもなく、ベビーシッターとして働く女性にとっても活躍の機 会拡大につながる。広く社会で活躍する女性を、ユーザー、ベビーシッターの両面からサポートしている㈱カラーズについて、女性の活躍をサポートする会社という視点と、同社自 身、女性が活躍する会社ということで両方の視点から、佐々木恵さん(29歳)に話をうかがった。佐々木さんは同社が創業した昨年、6年間勤務したリクルー トを辞めて転職してきた。現在は法人営業を担当する。
ベビーシッターの事業に着目した原点は創業者・経沢香保子社長の実体験にあった。経沢社長は、2000年にマーケティング会社を起業し、2012年には最 年少上場女性社長として東京証券取引所マザーズ上場を果たした。その激動の30代に、自ら3人のお子さんの出産・育児を体験し、社長業と育児を両立させるために、両親やベビーシッターの協力が欠かせなかったという。今以上にベビーシッターを探すこと自体が難しく、料金が高く、信頼できる方と出会えるまでの 苦労は並大抵ではなかった経験を踏まえ、「もっと気軽に頼める仕組みがあれば、働く女性はもっと輝けるはず」その思いでユーザー目線の事業を立ち上げたのだ。
従来は、派遣会社がユーザー(依頼人)の条件に合う人材を探して紹介するというスタイルが主流。ゆえに、入会の手続きも煩雑で、料金も高くなるのが常だった。株式会社カラーズは、IT化を徹底してはかり、入会金・年会費といった初期コストを省き、料金体系をそれまでの1/3に抑えた。ベビーシッター希望者 は働きたい時給で登録。時給は経験や資格、特技などによって変えられる。
「そしてここが一番のポイントだと思いますが、ネットを活用しながらも、安全面や信頼性を担保するために、ベビーシッター登録者は全員、面接後、座学と実地の研修をクリアーしたうえでの登録が必須です」(佐々木)。
いわゆる子守りから、料理や家事、育児教育など、ユーザーは求めるベビーシッターの条件提示を掲示板にアップできるなど、ムリなく、マッチするベビーシッターとの出会いが可能となる。現在、ベビーシッター登録者数は(262名(2016年2月19日現在))。SNSなどによって有名上位校の大学生の登録者数も増え、口コミも加わって登録者数は日々拡大しつつあるそうだ。
そうした経緯もあって、女子大生向けのベビーシッター講座なども積極的に開催している。社会に出てからも長く働きたいと考える女子大生にとって、ユーザーは自分のロールモデルとなるワーキング・マザーに他ならない。
事実、「ユーザーの9割はワーキング・マザーであり、企業経営者や管理職など責任ある立場で活躍されている女性にも多くご利用いただいています」(佐々木)。
ベビーシッターを福利厚生の一環として取り入れたい企業向けの営業も担当している佐々木さんも既婚者だが、まだ子どもはいない。だから、「産まれるということになったら間違いなく自社のヘビーユーザーになるでしょうね」と笑う。
その言葉どおり、㈱カラーズ自体が女性を中心に活躍している典型的な企業といえる。社員のほか、アルバイトやインターン、業務委託などを合せると20数名 が在籍し。その7割が女性という構成。そして半分以上が既婚者であり、子どもがいて当然のように福利厚生の一環として自社のサービスを活用している。それ ぞれに自分なりに働き方を決めて幅広く責任ある仕事に専念しているのだ。
子どもができると、1年間は産休と育休を取得、その後、時短で職場に復帰するというのが一般化しつつある。多くの働く女性がそう望んだ結果ではなく、それしかない選択肢にどうにか合せているのが現状だ。
「仕事内容が人それぞれのように、働き方にもそれぞれスタイルや価値観があり、それを実現できる選択肢があることこそ重要です」(佐々木)。 高い目標を共有し、それを達成するモチベーションの高い会社ほど選択肢が多いが、㈱カラーズも同じように女性活用を進化させながら、大きな成果をもたらしているようだ。
「多様化」を意味するダイバーシティ(diversity)への取り組みが声高になっている。本来の言葉の定義は「男女、年齢、国籍などの枠を取り払っ て、社会を活性化しよう」というものだが、最近はとくに「女性の活用、戦力化」という意味でよく使われる。その実現に必要な条件は平たく言ってしまえば、「子どもが生まれても女性にとって働きやすい環境があるかどうか」に尽きる。
子どもはお母さんが育てるものという古い考え方の根強く残る社会では、能力ある女性に選択肢は少なく、道が閉ざされるケースもある。一方で、子どもはみん なで育てるもの、お母さん一人が全部やる必要はないというダイバーシティの意識が浸透すれば、社会は確実に変わっていく。「私たちのサービスはそれを後押しするサービスという強い信念をもって取り組んでいます」(佐々木)。
日本の育児環境を本気で良くしたい、変えないといけない。変えていけるサービスを創っている、その断固たる使命感もまた、株式会社カラーズならではの強みといえるだろう。
※取材ご希望がありましたらご遠慮なくお寄せください。
(Report 児玉元秀)
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