提言:日頃からオフィスをみんなで考える オフィスを考えれば売り上げが増えるという話はウソではない
寺岡 晟

まだ営業の現場にいた頃、ワーキングマザー120名余の営業部隊の責任者を務めたことがある。
働く主婦たちの仕事は広告営業だ。朝、営業に出て、夕方会社に戻ってくる。初めての懇親会で主婦たちは職場の感想を言い立てて私に冷汗をかかせた。やれ野暮ったいだの、資料が山積みだの、窮屈で息が詰まるだの…。これがきっかけで私も働く環境に少しは気を払うようになった。

同じ頃、友人の勤める会社が、「オフィス大賞」を受賞した。会社を訪ねると、畳の会議室が設けられ、そこに寝転んでいる社員の姿があった。私は「こんなオフィスにしたい!」というスケッチ画コンクールを始めた。チームには美大出身や建築設計の出身のミセスもいた。照明の蛍光色は疲れる、エアコンが効き過ぎる、チーム単位のファイル管理にしたい、木目のデスクで落ち着いた雰囲気に、なんにでも使えるスペースがほしい…。アイデアが山ほど集まった。

こうして、「オフィスリボーンプラン」がスタートした。費用の原資は売上げに頼る。だが、「自分たちのオフィスは自分たちでつくろう!」と、みんなのやる気がみなぎり、業績は尻上がりに伸びていく。思いがけない副産物だった。
とくに期待が集まったのは多目的スペースだった。資料をつくったり、企画書を読んだり、ミーティングにも使えるようなスペース。1人で考えるのではなく、3人寄れば何とやらがサッとできるスペース。お互いに刺激し合って、楽しく仕事をし、成長していける、そんなオフィスのコアとなる多目的スペースだった。

その期が終わってみると、わがチームはみんなの頑張りで目標をはるかに上回る売上げを達成し、念願の黒字も手にした。こうして文句なくオフィスリボーンに手をつけることができた。
多目的スペースのテーブルは楕円形、椅子はオレンジ色のキャスター付きの軽めの椅子、同じ色のパーテションは、さまざまな連絡メモと、飲み会の案内や小旅行の呼びかけ、メンバーのご家族の慶事、あるいは、「これ譲ります!」などの掲示など、様々なインフォメーションボードとなって職場の雰囲気はガラリと変わった。

オフィスリボーンの成功の要因は、みんなが主役になれたことだった。自分のオフィスは自分たちでつくる。まさしく参加意識、当事者意識のたまものといえる結果だった。
風が吹けば桶屋が儲かるではないが、オフィスを考えれば売上げが増えるというのは、私がこの目で見たのだからウソではない。

2015-11-8

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