提言:モノで人を語り、人がモノを語る。そんなモノ(商品)がヒットを生む!
吉田久美子

私の仕事は広報代行。企業や団体、サービスなどの広報業務の代行を専門に行うPR会社です。すでに四半世紀以上、この仕事をやっている私が信条としているのが、

「広報とは、知られていないことを知ってもらうための知らせる活動である」ということ。とても単純なようで、簡単ではありません。しかし、活動の成果が形になった時に得る満足感は、お金だけでない、達成感と喜びがあります。たとえば商品。それがどんなに素晴らしく画期的な物であっても、誰かに知られなければ、“存在しないこと”と同じです。まずは知ってもらうこと。そしてそれをビジネスにつなげるためには、その商品のスペックだけではない「差別化」がとても重要だと思います。高度情報化社会にあっては、素晴らしい商品を開発しても、すぐに似たような商品が出てきてしまうからです。

では「差別化」とは何か。私はその重要なファクターの一つが、「人」だと思うのです。

モノづくりには必ず「人」が関わります。ざっとラフに考えても、その商品のアイデアを考えた人、形にした人、製造する人、営業する人、販売する人。商品はそんな人々のチームワークの結晶ではないでしょうか?そこには何らかの、試行錯誤などのプロセスがあり、ドラマがあります。そんな、商品開発の裏に隠された、ひとつひとつのストーリーは、きっと商品に気づかなかったような魅力・付加価値を生むはずです。私の会社がPRをお手伝いした、あるいはしている会社にも、そんな商品の魅力が伝わることで、ヒット商品になり、ブランドになり、企業文化を作り、社員数人の会社が、10数年で有名企業の仲間入りを果たした、という会社が何社もあります。

ある化粧品会社は、女性社長が、脱サラして起業し、「自分が本当に欲しいと思った化粧品がなかった」として、自分の理想の化粧品を東奔西走して、完成させ、通販で販売している会社です。現在は破竹の勢いでビジネスを伸長させています。この会社のヒット商品は、それまでに市場にないジャンルのものでした。社長はじめ、数人の女性社員が「こんなものがあったら自分も欲しいし、女性たちもきっと喜ぶに違いない」という思いで作った商品で、瞬く間に愛用者が増え、その商品カテゴリーでは、間違いなく一番のリーディングブランドになっています。商品の魅力、効果や使いやすさが一番の人気の理由と思いますが、まず消費者に伝わったのが、「こんな思いで商品を作った!」ということを常に言い続けた、その、メッセージに消費者が共感したことも人気の背景にあると私は確信しています。

「作り手が見える」「作り手の思い入れが伝わる」ことは、商品への期待だけでなく企業への信頼にもつながります。これ以上効果的なファン育成、マーケティング活動があるでしょうか?

一方でこだわって完成させた商品や、かかわった人々、たくさんのストーリーがあるけれど、広告が出来るような豊富な予算もないのに、どうやって知ってもらえばいいの?と、悩んでいる人や企業もあるでしょう。前述しましたが、今や高度情報化社会です。情報を発信する方法は山ほどあります。また、モノづくりを取り上げる媒体やWEBサイト、コラムもあるので、そういったメデァにアプローチするのも一考です。PR会社に相談するのも良いかもしれません。一部の大手の会社を除けば、広告と異なり、安価な予算で採用できます。

わが子のように大切な商品だからこそ、率先して語りませんか?知られるために知らせることの重要性を、ぜひ企業経営者の方に認識してもらいたいと、切に願っています。

 

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