提言:イクメンが女性の社会進出のアクセルを踏む勢力になれる
富田英太

 私のクライアントにはサービス業の企業や店舗が多く、経営者の皆さんから女性スタッフの育成についてよくご相談を受ける。労働環境の厳しいサービス業界のことだ。女性従業員は将来にわたって活躍する人材とは考えづらい面があり、いずれは結婚し、子育てをするために、いつかお店をやめてしまうのではないかと、とかく経営者は悲観的な見方に陥ってしまい、悩んでしまう。そうした心配は分からないでもない。
しかし、そもそも子育て=女性が担当、と考えていること自体が、現実の社会との誤差の始まりなのではないか。「育メン」という言葉がはやりつつも、現実を見れば、やはり男性と比べると家事や育児、さらに就業している女性の負担がとても大きいという感を逃れることができない。

 昨今、女性の社会進出は加速している、その動きは少子高齢化の傾向と重なって大いに注目されており、「結婚、出産後もまた仕事をしたいか」という質問に対し、約8割以上の女性が「はい」と答えているほどだ。だが海外(欧米)では共働きの夫婦がベビーシッターなどのサービスを利用するなどの社会システムが確立しているのに比べ、日本ではまだあまり浸透しておらず、保育園などの施設も、人手も不足で待機児童の問題が深刻な社会問題となっているのはご存知の通りだ。
 そういった世論に対して、産後復帰しやすいような体制を準備している会社も少しずつ増えてきた。しかし、子育てをする女性にとってはまだまだ働きやすい環境にはなっていない。職場の人間環境や業務上の問題で、長期産休を取りにくい状況でしたり、産後の復帰を歓迎していないという現実も沢山ある。これでは、やはり日本女性のこれ以上の社会進出にブレーキをかけてしまうだろう。

 そこで原点に戻ってみよう。もともとは「育児や家事は女性がする」という固定概念を覆して、そろそろ「男性もする」ものと頭を切り替えるところまでさかのぼればどうか。もうとっくにそういう時代が来ているのだ。それは男性が育児休暇をとるのが自然な時代ということなのだ

 仕事がら、店舗経営の表裏がある程度分かっているつもりだ。飲食店や美容室などは体力仕事が多く、女性が出産育児をしながら現場で働くということはとても難しくどうしても選択肢がなく退職するしかないという技術者がとても多い。
せっかく10年ほどのキャリアを積んだとしても途中で女性の場合だけがキャリアを中断してしまうことになり、育児が終わった後も、そのブランクのため復職するのが非常に難しいというのが現状といえる。そんな中、ある店舗で美容師同士が結婚した場合、男性にも育児休暇を取れる制度を設け、妻との分業をはかる事ができるようにし、育児を夫婦間で分担しながら現場に立てるようにした。結果、その店では優秀な技術者の獲得と囲い込みに成功している。

 女性の社会進出をめざすのであれば、それと共に男性の育児への参加についても合わせて視野に入れるべきだと思う。男性も育児に積極的に協力する。さらに職場でも男性の育児参加を奨励し、サポートする。そうした地道な積み重ねが女性の働きやすい職場づくりや離職率を下げることにつながり、女性の戦力化に大きな影響を与えるのだと考える。

(ご意見・ご感想をお寄せください)