AIやネットの活用の一方で雇用のミスマッチに取り組む

 日本の人口減少がとうとう目に見えるほど明らかになってきた。総務省の調べでは5年前に比べてすでに100万人減ということだ。近いうちには労働市場にも影響をもたらすことが予想される。政府も経済界も女性活用や高齢者の雇用促進など様々な対策を試みている。海外からは外国人労働者や移民の受け入れで圧力が高まってきたのも気がかりだ。

 そうした動きを背景に、ネットや人工知能(AI)が労働力危機の対策として現実化してきたと日本経済新聞(4.1)が伝える。政府は月内に行われる産業競争力会議で、AIの活用で製品開発や人材育成を進めていく方針を打ち出すという。だが、労働市場を固定化し、従来のままの考え方では機械がヒトに置き換わるだけで雇用機会が失われるだけに終わってしまう。同紙は第4次産業革命をにらんだビジョンとして、今よりも柔軟な労働市場をつくり、企業や系列の垣根を超えた産業の再編が出来るかどうかがカギだとしている。そうすることで初めて、伸びない労働力人口を生産性の向上で補い、課題を解決することが可能だというのだ。

 分かりやすく言うと、生産性の指標として労働生産性というのがある。国全体の稼ぎ(GDP)を就業者数で割って求める1人当たりの稼ぎのことだ。わが国はこの数字がリーマンショック前までに回復していない。その大きな原因はいまだ生産性の低い産業が雇用を抱え、成長産業にうまく流れていない雇用のミスマッチにあると思われる。AIやネットを実用化する一方で国をあげての労働力再分配を急がなければならない。