長時間労働で大手企業も捜査対象になる時代

先日、読売新聞の「人生相談」から育児とキャリア設計で悩む30代女性の相談を本欄で紹介したところ、けっこうな反響があった。そういう目で近頃の新聞各紙の相談コーナーを見ると、仕事をする女性の相談事がことさら目立っているのに気付く。

つい先週も、過労にパワハラが重なって辛いと20代の会社員女性が「一体どうしたらいいのか」と助言を乞うていた。昨年大学を卒業したばかり。人材会社に勤務する。相談の内容は過度なノルマと長時間労働、残業代の未払い、加えてパワハラやセクハラも日常的。体を壊す社員もいる。両親に相談したが「辞めてどうする」「仕事がすべてでない」とか、NPO法人に駆け込んでも人ごとのように笑われたということだった。相談は大した貯金もなく辞める私を、世間は「頑張れなかった人」と評価すると思うと、怖くて辞められない、どうしたらいいかというものだ。

 

これに対して回答者は、このような状況で何が出来るかを考えるのが大切。いずれ労働相談には「証拠」を要求される。日記でも通院記録でもいいので実態を明らかにする証拠を集めよう」と提案したうえで。しかし、もっとも優先すべきは健康だ。不調をきたしたら仕事を休み、いずれ辞めることを準備しよう。

日常化している違法残業にメスを入れようという動きが顕著だ。昨年は大手広告代理店の女子社員の自殺事件があり、つい先日も大手電機メーカーが労働基準法違反容疑で書類送検されるということが起こった。

残業は労使間で結んだ協定(36協定=サブロク)を超えると違法になる。一方、労災の認定基準では脳・心臓疾患、うつ病などの精神障害といった発症ごとに月の残業が80時間以上、160時間以上などが定義されている。働く本人からの申告があれば企業への立ち入り調査⇒是正勧告⇒改善指導をへて、それでも悪質な行為が続けば違法残業として労働局の捜査対象となる。一昨年、全国の労働局は違法な長時間労働で79件を送検した。

(0112 岩崎)