父親の意思を継いで、OLから社長へ、主婦から社長へ

父親の経営する会社を継ぐというかたちで思いがけなく社長になった女性たちを日経新聞(8-17)がレポートしている。OLから社長へ、主婦から社長へ、女性のキャリアプランが多様化する現象の一端だ。

 

「後継者は男であるべき」というのは日本の会社の従来からの考え方だ。その底には「女には経営は出来ない」という漠然とした不安がある。だが、全国の企業の社長の平均年齢は60歳を超えた。その7割近くに後継者がいないという切迫した事情がある。そうも言ってられない事業承継の対象として、女性に目が向けられるケースが増えてきた。

精密金属加工のダイヤ精機社長に就任した諏訪貴子さん(46歳)もそんな一人だ。もともと跡継ぎになる気などなく専業主婦の生活を考えていたが、父親の急逝で32歳の若さで腹をくくって社長に就任した。小学校に上がったばかりの子どもがいたが、夫が米国に赴任したばかりだったので就任後は家事や育児をしたらそのまま寝るという生活になった。経営の経験はなかったが、大学を卒業後は大手メーカーでエンジニアをしていたのでそこで得たノウハウが頼りだった。10年以上たって「いまは女性に能力も学力もあるから女性が会社を継いでもまったく問題ない。親が心配することはない」と思っている。だが、2代目は創業者の理念のもとに集まった人たちを引っ張らなければならない。今も、その難しさは痛感している。

 

このような事業承継の手法は、最近ではM&Aというかたちで進められることも少なくない。だが、従業員にしてみれば天から降ってきたような経営トップは心理的な抵抗も大きい。その点、女性が父親の意思を継いで後継者となるのは、女性活躍の幅を広げるとともに、後継者問題の一つの解決策を示しているといえそうだ。