正式な資格を持たない保育職員が増えるのは是か非か

保育士の人手不足が深刻だと指摘されるのはさほど新しいことではないが、それが一気に大騒ぎになったのは「女性活躍」という安倍政権のキャッチフレーズが浸透してからだ。この課題、共働き→待機児童→保育園不足→保育士不足→待遇改善という議論をたどってようやく給与の(何度目かの)2%引き上げが現実のものとなってきた(日経5-17)。

政府は給与引き上げと同時に、保育士の資格がなくても経験豊富な保育ママや子育て支援員というかたちで人手不足の解消を考えている。公立の保育所で正式な資格を持たない職員を雇いやすくするというわけで、例によって実験の場は「戦略特区」と呼ばれる全国の指定地域だ。しかし、この試案には野党側が激しい批判をしている。昨日の国会論戦でも民進党の山尾議員が安倍総理に噛みついた(産経新聞電子版)。

山尾「2%の引き上げの意味は何か。女性の全産業平均賃金に近づけるのが目標というのは女性差別だ。保育や介護はそもそも女性がやる仕事という認識がまずある。だから女性は会社を辞めなければいけない」

総理「男女間の賃金格差があるのは認めるべきだ。それは管理職比率と勤続年数の差異だ。女性の管理職への登用が進み、出産と子育てと仕事が両立することで女性の勤続年数が延びれば男女間の賃金格差はかなり解消される」

保育施設で正規の職員と非正規職員が混在する状態が進めば、こんどは両者の賃金格差が問題になってくるだろう。政府は非正規職員の賃金をめぐり、職種によらず正規職員の7~8割に早期に引き上げたいとし、特区内でもこの水準を目安になるとみられる。