急拡大するRPA、乗り越えるべきハードルとは何か?

働き方改革や業務効率化の切り札として定着しつつある「ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)」。人間が担っていたパソコンの定型作業を自動化するソフトである。急拡大の一方、安易に導入するとリスクも伴う。成功に導くため、乗り越えるべきハードルとは何だろうか。(日経08-27)

 

東京・大手町の住友商事本社で、深夜、RPAが稼働する。鉄鉱石や銅の価格をウェブサイトで調べて表計算ソフトに入力し、部署の全員にメールで送る。これはかつて、同社の資源部門で働く若手社員の仕事だった。週に2時間かけてリポートを作成していたのが、RPAなら、同じ作業が20分程度で完了する。同社はRPAを全社に導入した。鉱物資源の市況調査に加え、財務諸表の作成や取引先企業の与信管理など、今年7月時点で280体が稼働し、人間による単純作業を肩代わりする。RPAで過去1年に削減した労働時間は、算出できるものだけで1万6千時間。出資先などのグループ全体では、同10万時間を超えるという。

 

ソフトバンクは20年度末までに4千人分の業務をRPAに代行させる。三菱UFJ銀行は23年度までに約3千人分に相当する業務量を減らす計画だ。三井物産も受発注作業をRPAに代行させることなどで、既に年1万1千時間の業務量を削減した。人員削減よりむしろ、浮いた時間を創造的な仕事に振り向ける目的で活用する。

 

急速に普及する裏側で、壁に直面する企業も増えてきた。コストと合わなかったり、少数の社員にしか関係しない業務であることが理由だ。RPAが向いている作業は多くの人が時間を費やす作業の代替である。人手不足に悩む日本企業がRPAに寄せる期待は大きい。だが、現場任せでは効果は限られる。業務の見える化を進め、人間にしかできない仕事の見極めが欠かせない。

また、安易にRPAを導入すると、思わぬ落とし穴にはまるリスクもある。急速に普及する中で問題視され始めたのが「野良ロボット」の増殖だ。ペットが放置されると野良化するように、RPAも適切な管理が重要であり、使いこなせる社内人材の育成も、導入の成否を左右しそうだ。