女性差別の職場慣習も長年続けていると心地よくなる?  

 

時間労働やサービス残業が社会問題化する中で、日本人の働き方すべてに一般の目が厳しくなってきた。そういう兆候は思いがけないところで見つけることが出来る。例えば新聞の人気コーナー、身の上相談。読売新聞ではこんな相談が寄せられていた。

 

30代の会社員女性。女性だけが制服を着ることになっているが納得できないという相談だ。事務職なのに制服を着る合理的な理由はないはず。社内規則には「職員は制服の貸与を受けることが出来る」とあるだけで、着るかどうかは選べるはずなのに、私が必要ないと伝えると「年配の女性たちが同意しない」などと、実質的に女性にだけ制服着用を義務付けている。これは差別ではないか、どう対応したらいいのか。

これに対する回答は中央大学教授の山田昌弘さん。社会学者。専門は家族社会学・感情社会学ならびにジェンダー論だ。

「制服着用を女性にだけ実質的に義務付けるのは一種の性差別。慣習だからと片づける日本企業の悪弊だ。制服といえども日本社会の縮図を見る思いがする。すぐには変えられないなら、なし崩し作戦でいったらどうか。時々、上着だけ替えたり下だけパンツにして少しずつ私服の要素を増やしていく。「制服はクリーニング中」など、何か言われた時に備え、言い訳も用意する。いずれあなたに同調する人も現れるだろう。やってみる価値はある」

 

日本企業で働く外国人の女性社員が同僚の女性社員たちに制服は窮屈だからやめたら?と聞いたところ、「会社の仕事のために私服を汚したくない」など反発が大きく、制服追放の動きにはならなかったという。明治以来、日本の職場をつくってきた慣習の中には、性差別には違いないが、それが逆に女性には心地よいというようなことがけっこうあるのではないか。