受動喫煙対策をしないと損害賠償のリスクを抱える

小池都知事の主導による、子供がいる家庭での喫煙制限が現実のものとなってきた。このほど都議会で「子どもを受動喫煙から守る条例」が成立したからだ。来年4月から施行される。東京都は受動喫煙防止対策をこれからも推進していく姿勢だ(日経新聞10-5)

 

条例では、子供を持つ保護者の責任として、子供がいる室内や車内で喫煙しないことや、分煙が不十分な飲食店などに立ち入らせないことなどを求めている。いずれも努力義務で、罰則規定はない。家庭内まで法律で規制するのはどうかという意見もあったが、国に先行して受動喫煙対策に取り組む姿勢を示すことに意味があったようだ。

家の中でも勝手にタバコが吸えなくなる時代の到来だが、一方でオフィスでの喫煙者の境遇は現在どうなっているのか。法律上、職場の喫煙は企業側の従業員に対する安全配慮義務とされる(労働契約法5条)。受動喫煙の問題もこの安全配慮義務の問題であり、企業がこの義務を果たしていないと従業員から損害賠償を請求されても仕方がない。これまで各地で起こった「受動喫煙損害賠償」では、5万円~80万円の調停が成立しており、札幌地裁では化学物質過敏症の後遺障害などを理由として700万円の和解が成立している。受動喫煙対策を講じていない企業は、このような損害賠償のリスクを抱えているといえるだろう。

 

社長や上の人がタバコを吸っていると分煙環境の必要性が認識されず、導入が遅れることが多い。逆にトップがタバコを吸わない場合は全面禁煙、全館禁煙まで発展するケースもある。分煙環境をつくることでかえって(喫煙室を媒介に)社内のコミニュケーションが活発になったという事例もあがっている。肝心なのは会社の事情に合わせた分煙、禁煙の早期実施といえるだろう。