公立の保育所が安く利用できる日本と、正社員の仕事がいくらでも見つかる米国

 女性の活躍を話題にするとき、必ずといって取り上げられるのが待機児童の問題。いうまでもなく保育所へ入る資格がありながら入れないで入所を待っている状態の子どものことだ。働く女性の足を引っ張る問題として年ごとに大きく取り上げられてきた。東京都では、都内の保育所に毎年60万人を超える数の利用申し込みがあるが、全員が入れるわけではなく昨年末の数字で8000人程度がこぼれて、これが待機児童となっている。
(日経電子版 7-13)

 このたびの東京都知事選でも待機児童は論戦の的となっている。候補者の解消策はさまざまだ。「公共事業は優先度が低ければ後回しにして予算を組み替えていく」と保育所への予算の重点配分を主張する鳥越氏。「予算の増額と合わせて、保育所整備にあたっての地域住民との合意形成で都も汗をかく」と訴える増田氏。「都有地の有効活用のため、保育所と高齢者施設の整備を進める」という構想の小池氏。
ここで知りたいのが東京という都市の保育実態は世界的にどういうレベルかということだ。なにかと東京と比較されるニューヨークの様子を調べてみた。米国では公的保育所というのがない。全部私立で保育料はきわめて高い。現地で暮らす日本人主婦の一人は、ニューヨークでまともな保育所に子ども一人を入れると月2000ドルはかかると嘆く。共働きの親なら払えるが、年収が低い家庭は仲間をつくって子どもを交替で預け合など工夫を強いられる。

 そんなわけだから、米国で子育てする日本人の母親たちにとっては、公立の保育所があって、安い金額で子育てしている日本の保育事情は羨ましくてたまらないらしい。だが、米国では中年女性でも容易に正社員の仕事を見つけることができて、雇う側も解雇が簡単なので気軽に雇えるという労働市場の事情などは日本と大いに違っている。待機児童の問題はいくつもの要素がからんでとても複雑な問題なのだ。