全員、捜査・送検権を持つ過重労働摘発チームの活躍

働き方改革を進めていくうえで、日本企業に巣くってきた長時間労働の悪習は大きな壁となる。この問題は大手広告代理店の新入社員が過労自殺したことであらためてクローズアップされたが、その背景を知ると、大企業に対する違法労働の取り組みが本気であることが分かる。強制捜査権を持つ労働局の長時間労働摘発チームの動きを読売新聞(2-1)が伝えている。

東京労働局が労働基準法違反で昨年から今年にかけて摘発した企業はディスカウントストア、靴販売チェーンなど6社。もちろんくだんの広告会社も含まれている。捜査は大企業を専門に取り締まる「過重労働撲滅特別対策班」という長い名前のチームが担当する。2015年4月に、厚生労働省のもとで東京労働局と大阪労働局に新設され、メンバーは全員、特別司法警察職員として違法な事業者を検察庁に送検する権限を持つ。チームは通称「かとく」と呼ばれている。いわば労働Gメン。米国の禁酒法時代に活躍したエリオット・ネス率いる「アンタッチャブル」を思わせる存在だ。
違法労働の疑わしい企業があれば捜索し、勤務記録などの資料を押収し、時間をかけて記録を分析する。同時に幹部らから聴取して違法か否か判断する。昨年7月、第1号の摘発が先にあげた靴販売大手のA社だった。

違法な長時間労働の企業に対しては各地の労働基準監督署でも行っている。その中で「かとく」が担当するのは、(1))事実関係の確認・調査が広範囲におよぶ、(2)捜査対象が多岐にわたる、(3)高度な捜査技術を要する、などに限って「かとく」が担当するという。日本の労働環境の最前線を担う部隊だ。