働き方改革の効果がすべての企業にもたらされるわけではない

「多様な人材がいる」というだけではダイバーシティ経営とはいえないと、東京で開かれた『ダイバーシティと経営革新』をテーマとした講演で佐藤博樹・中央大学教授が指摘する。これら多様な人材の能力を引き出し、経営に貢献できるマネジメントの仕組みを実現して初めてダイバーシティマネジメントといえるということだ(日経ウーマン電子版11-30)。

 

佐藤教授は経営が陥りがちな勘違いのケースとしてこんな例をあげる。「自社の商品ユーザは女性中心だから女性の感性を生かした商品開発チームをつくろう」と女性だけの開発チームで成功した。ここで「女性だから成功した」と評価するのではダイバーシティ経営を正しくとらえているとはいえない。「大切なのはチームのリーダーがどういうマネジメントを行ったかということだ。その要因をしっかり見極めなければ安易に女性の開発チームをつくればよいという発想になってしまう」(佐藤教授)。 つまり一人一人が持つ能力や適性を活用するのがダイバーシティ経営であり、女性だから、外国人だからと十把ひとからげに捉えるのは正しくない。女性役員が多い企業は利益率が高いという分析から女性管理職を増やそうと飛びつくのもその類いだ。

 

 

 

ダイバーシティ、女性活躍、フリーアドレスと、矢継ぎ早に飛びだす「働き方改革」の処方箋だが、それらを実施しなければ企業が伸びないのかといえば必ずしもそうではないだろう。その効果が一様にすべての企業にもたらされるものでもあるまい。各社はさまざまな事情を持っている。どれを、どういうタイミングで、どういうかたちで実現していくかは経営トップに課せられた大きな判断になる。