休みやすい職場が働きやすい職場とは限らない

日本に上陸予定の米国大手の動画配信会社が、日本の全従業員を対象に1年間の有給育児休暇を発表して話題になっている(日経産業新聞)。給与は全額支給、1年間全部か一部の期間休んで、もちろん再度復帰することもできる。ここまでの制度は米国でも珍しいようだ。

 

京都府舞鶴市にある歯科医院は「カンガルー出勤」が名物だ。育児中の女性従業員が活躍しているからだ。歯科衛生士や受付スタッフなど27人のうち、子供を持つ女性が16人。そのうち6人が出産や育児休暇中だ。休暇中の仕事は、ほかの十数人がサポートスタッフとして受け持つ。子供を預かってくれる祖父母に月5000円を支給する制度もある。出産後の復職率は87%に上るという。そんなわけで子供を背負いながらはたらくからカンガルー出勤。実際のカンガルーはお腹に子供をかかえるのだが。院長は、「妊娠の報告を受けるのがなによりの喜び。休みやすいだけでなく、働きやすい職場が重要」と説いている。

 

そもそもワーカホリック的な性質や、上司への気兼ねなどは、働き過ぎと言われている日本人のお家芸と思っていたので、米国もその例に漏れずとは少々意外だ。米国でも会社員が長期間休暇をとるのは気を遣うらしく、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は日本人にもありがちなこうした遠慮を「職場における殉教者症候群」と呼んでいる。京都の歯科医院の記事はある意味対照的ではあるが、けっして米国的でもない。日本人の家族的なきめ細やかさが、子を持つ女性のやる気を引き起こし、「休みやすい」と「働きやすい」の両面を成功させている(8-26山﨑)