中小企業ならではの人材確保術とは

中小企業がデジタル技術を使い、働き方改革に本腰を入れ始めた。IT(情報技術)を労務管理に応用し、あの手この手で離職防止や生産性向上を図る。(日経10-8)

 

 

大企業が働き方改革に動き出すなか、国内就業者数の7割を占める中小企業の人手不足は深刻だ。日本商工会議所が18年春に全国の中小企業に実施した調査では、回答企業(2673社)の65%が「人手が不足している」と答え、昨年調査より4.4ポイント上昇。不足との回答の34%が「自社の働き方に魅力がない」ことを理由に挙げた。

 

輸入住宅販売のジョンソンホームズは従業員が笑顔で出社して就業意欲を高めようと、社員の感情を把握する勤怠管理システムを導入した。各拠点に備えたタブレットにカードをかざすと従業員の写真が撮影される。ソフトウエアで画像を解析し笑顔で出社したかを判定する。システム導入で集めるデータで正確な労働時間を計測し、働き方の見直しにも生かし、笑顔率の高い社員に報奨金や食事券を支給することも検討する。

トレーニングジム運営のファンズは、社内SNSと連動したポイント制度を導入した。社長や社員が社内行事の様子や気づいたことを発信。「いいね」がつくとポイントが付与され、書籍購入や有給休暇などと交換できる。

ゲーム要素を採り入れた動きも出てきた。ゲーム開発のオルトプラスは従業員の行動を数値化し、企業独自の「仮想通貨」を発行できるシステムを提供する。勤怠システムと連携し従業員が定時に出社すると社内通貨が付与され、ためた通貨で飲み物やお弁当を購入できる。

 

日本の中小企業は労務管理を社長の「経験と勘」に頼ることが多かった。だが人口減少で人材獲得競争は激しくなる。雇用動向調査によると、従業員数が100~299人の企業の離職率は16年に17.1%と20年前に比べ3.3ポイント上昇し、1000人以上の大企業(14.8%)より高い。

デジタル活用の働き方改革は待ったなしだ。