マイナスがプラスに変わる、バリアフリーの先の景色に見えるものとは?

障害者は全国で約963万人いる(2019年障害者白書)。障害者や高齢者も使いやすい「ユニバーサルデザイン」を企画・設計するミライロ(大阪市)の社長、垣内俊哉(30)もその一人だ。(日経02-02)

車いすで生活する垣内は、大学時代のアルバイトで社長から、明るい性格が営業に向いていると判断され、外回りを命じられた。社長は「車いすでは無理」と考えず、特別扱いせず「何かあれば言えよ」というスタンスだった。「車いすの営業マン」として顔を覚えられトップの成績になった。障害があるからこそできることがあるという光が初めて見えた。

 

現在の会社では、丸井グループで性的少数者(LGBT)対応のマナー研修を行うと、27センチの婦人靴のラインアップにつながった。街中の段差などの情報を提供するバリアフリーの地図アプリを開発すると、大和ハウスグループの住宅設計に活かされた。

 

最低限の日常生活を送るための「バリアフリー」は進むが、それではマイナスがゼロになっただけ。病や障害を障壁(バリアー)ではなく個性やチャンスととらえれば、社会的・経済的な価値を生み、マイナスはプラスにもなる。

 

出産や子育て、闘病などを経て職場に復帰する女性もそうだ。ライフイベントと上手に折り合いを付けながら働き続けようと試みる女性たちは、その視野の広さ、懐の深さなどの面でも「企業の宝」と呼べる。管理職に就いてもらえれば、さらに働きやすい環境づくりに知見を役立ててもくれるだろう。

 

障害者も女性も働きやすい職場は、誰にとっても働きやすいはずだ。障壁(バリアー)を作らない社会は価値(バリュー)を生み出す。