ある会社のLGBTへの取り組みは 2人の人事マンの会話がきっかけだった

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)といえば、ベビーオイルやスキンケア用品などで知られる外資系企業だ。だが、同社は日経新聞の「人を活かす会社」ランキングで総合1位に急浮上している企業としても話題になっている。(日経12-1)

 

J&Jが人材活用で先進的なのは社員の多様性、つまり「ダイバーシティ経営」の一環としての「LGBT」への取組みからも明らかだ。今年11月、約200人の社員が集まって「オープン・エンド・アウト」という催しがひらかれた。これは米国本社の、LGBTへの差別をなくし、理解を促すための活動の日本版であり、米国、カナダに次いで世界で3番目の開催となった。LGBTの当事者である女性ら4人をはじめ大学教授らも参加した。

日本での活動について、40代の社員は「オープン・エンド・アウトが社内にあることで、安心して働ける」と話す。J&Jに転職する前の職場では、上司からしばしば、「いつになったら結婚するのか」と尋ねられることが苦痛だった。昨年の秋にこの社員ら8人で活動が始まり、現在は50人が参加するまでに育った。会社も活動費を補助するなどして支援している。どんな活動をするかは原則自由で、経営陣から内容の指示を受けることはない。

 

きっかけは人事部に勤める30代と40代の2人の男性社員が、「米国でやっている活動を日本でもできないか」と交わした会話だった。人にはそれぞれ目に見えない「違い」がある。もし、2人の会話がなかったならば、毎日を苦痛に思いながら過ごす社員の職場生活は誰にも知られないまま続いたに違いない。だが、考えてみると日本にはそうした職場が大多数なのだ。