「130万円の壁」を壊して主婦の働こう意欲を拡大する試み

 以前から「130万円の壁」が主婦層の勤労意欲にブレーキを掛けると指摘されてきたが、とうとう見直されることが決まった(日本経済新聞)。130万円とは、年間の収入がこれを超えると正社員扱いされ社会保険料の負担が増えることで手取り額が減るという一線。働く側はそれを懸念して労働時間をコントロールしようとする。これと似た「103万円の壁」も配偶者控除が受けられなくなる一線をいう。パート主婦の労働時間はこうした壁に長く制約を受けてきた。

 このたびの改正は16年4月から19年度まで4年間試しにやってみようということのようだ。企業の人手不足の解消、女性の社会進出、家計収入の増加とあって、机上の計算だけなら落語の「三方一両得」のごとしだが、この実現のために政府は、(1)大企業で2%、中小企業で3%以上の賃上げ、(2)パート労働者が働く時間を週5時間以上延長などを条件に企業に補助金を配り、社会保険料の負担をやわらげる。お試しの対象はパート労働者20万人程度。全体で1600万人のパート労働者に対してわずかな数字だ。これとは別に、専業主婦世帯の就労を阻むもう一つ要因として、年収がこれを下回る専業主婦世帯の税負担を軽くすることも考えていかなければならない。まだまだ課題は山積だ。

 一億総活躍を邪魔する壁を一つひとつ壊していこうという意気込みはいいが、その足元では異論反論が噴出しているようだ。政府肝いりの「総活躍国民会議」で、委員に選ばれたタレントの菊池桃子さんが「『一億総活躍』という言葉は時代遅れで共感しにくい」と、新たに「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)という言葉を提案して話題になっている。どっちもどっちに思えるが。(12-9 岩崎)