電車の運転士、働き方改革に焦り

JR東日本は7日、山手線で電車を自動で走らせる実験を報道陣に公開した。(日経ー0108)国鉄民営化から40年を迎える2027年までに自動運転の実現を目指す構想を持つJR東。大量定年を間近に控えた焦りが見える。

 

 

同社が自動運転を公開したのは初めて。7日未明、最新型車両のE235系で実験した。運転士がアクセルなどの操作レバーではなく発車用ボタンを押すと、運転を自動で制御できる装置「ATO」を搭載した電車が動き始め、次の駅に到着すると停止位置に自動で止まった。乗務員が駅間の所要時間を計測し、定刻通りに着けたかなどを確認していた。

駅間や踏切などで異常が起きた場合、安全に止まったり避難が差し迫った時に円滑に誘導できたりするかなどの解決すべき課題は少なくない。東京・台場を走る「ゆりかもめ」など自動運転を実施している鉄道会社はあるが、踏切がなかったり、乗車人数がJR東に比べケタ違いに少ないから可能なことである。

 

JR東は全社員5万5千人(18年4月時点)のうち、55歳以上の社員が全体の24%。他の年齢層と比べると多い。所属別の年齢別構成は開示していないが、定年の60歳が間近に迫る人は多い。自動運転の実現を悠長に待てないのは、運転士や車掌を約1万1千人抱えているが、これから定年で退職を迎える社員が多数出てくることが背景にある。

不足分は新たに採用すればいいという見方もあるが、人手不足で採用が難しい上、教育などにもコストがかかるのでJR東は採用には消極的だ。働き方改革に転機が訪れる。