育児でキャリアが中断するのが怖いと30代女性の人生相談  

 

新聞紙上の身の上相談は明治の頃から人気のコーナーだったようだ。10年ほど前にも「大正時代の身の上相談」が本屋の店頭を飾ったくらいだ。最近はそれほどでもないようだが、人気の秘密は寄せられる相談ごとが世相を反映して興味をそそるからだろう。年明け早々にもそんな投稿が目に入った。

(相談)

読売新聞の『人生案内』(1-5)は、「育児での職歴中断が怖い」と題した育児離職に関する相談だ。30代の既婚女性。時短で薬剤師として働きながら家事や育児を担っている。夫は残業で毎晩遅く帰る。子どもは今年保育園を出ることになるので悩んだ末、来年からは幼稚園に入れることにした。子どもと向き合う時間が欲しいからだ。幼稚園のあとにベビーシッターなどのサービスを利用すれば仕事は続けられそうだが、不安もある。職場を離れることも考えているが、復帰後が心配で決心がつかない。私のように仕事も家事育児も完璧を目指したいというのはおこがましいことだろうか。

(回答)

お子さんの保育園の「3歳の壁」については幼稚園入園で決着したとしましょう。そのうえであなたの仕事の問題ですが、迷っているときは結論を出さず、検討を続けるのが無難です。まずは幼稚園のあとの保育にベビーシッターさんや地域の子育て支援を活用してみる。いろいろと試みるうちにご自分に一番ふさわしい策が見つかると思います。どうしても無理と感じたら、そのときに仕事の中断を考えても遅くないでしょう。お連れ合いにもよく相談されるといいですね。

時短でなんとか育児離職をつな渡りしてきた相談者が、この回答で満足したとは思えないのは(回答者は大学教授の男性)、自分のキャリアについての不安に触れられず、相談者が考えた末の知恵を上塗りした程度で中途半端なものにすぎないかわらだ。幼稚園か保育園か、仕事か家庭か、考えてみれば、この世代につきもののライフイベントは「人生案内」を超えた難しさ、日本社会の構造的な悩みにつながっているのがよく分かる。