東京五輪は働き方改革に機運をもたらす
東京五輪の開幕まで1年を切った。大会準備が進む中、五輪・パラリンピックの開催は地域にどのような変化をもたらし、どのようなレガシー(遺産)を残すのか。一つ言えることは、働き方改革と労働力不足の機運と合い重なり、テレワークが普及していることがあげられるだろう。
政府などは2017年から毎年、五輪開会式の7月24日を『テレワーク・デイ』にして普及に取り組んでいる。今年は9月6日までの実験で2000社・団体、60万人以上がテレワークを試す。在宅勤務はこれまで、企業の福利厚生の一環の色合いが強かった。だが、最近では働く選択肢として当たり前になってきた。テレワークが制度としてあるかどうかが、働く人の会社選びの条件にもなり始めている。(日経07-30)
7月24日昼。競技会場に近い東京・豊洲のIHI本社は、普段混み合う食堂がガラガラだった。社員の約半数がテレワークや時差出勤をしたためだ。自宅で働いた30代の女性社員は「満員電車に乗らずに済み、仕事も効率的に進められた」と話す。
テレワークマネジメント社長 田沢由利氏はテレワークをこのように分析する。
大会期間中は効率的な物流に取り組もうと考える企業は増えてきたが、期間中だけの瞬間的なものになる可能性もある。一方、テレワークが定着すれば、人の流れは大会後も変わり続ける。なぜ混雑するか。それは人が仕事をするために集まるためだ。それに合わせるようにモノも集まる。人もモノもどんどん集中していき、目詰まりを起こしてしまう。オフィス以外でも働けるのであれば、地方で暮らしたいという人も出てくるだろう。人が分散すれば物流も集中しなくなり、様々な面で混雑は解消されていく。若い人たちの考えも変わってきている。どうしても都市部でなければならないという人が減り、生活の質を重視する人が増えている。地域にいながら仕事ができる環境が整っているのなら、地方を選ぶという人も多くなるだろう。しかし、人々の考え方が変わるには10年はかかる。テレワークは今は普及の過程にあり、大きな流れは大会後も変わらないだろう。働き方への意識が変化していることに、企業も合わせていかないといけない。