日本の働き方を変えた新型コロナ
新型コロナウィルスの感染拡大で、日本の働き方が変化を遂げている。自宅勤務や時差出勤を推奨する企業が相次ぎ、朝の通勤電車は2月の上旬の平均値と比べ約2割減、JR東海新幹線に至っては、3月1~9日の新幹線の利用者数は前年同期比56%減だった。(日経03-18)
通勤ラッシュが減ったばかりではない。リクルート服装を見ることも少なくなった。出社して面接を繰り返す採用方法が、ネットによる採用面接へと変わったのだ。USEN-NEXTは21年卒の新卒採用活動をすべてオンラインにした。会社説明会はウェブで開き、選考はスマートフォンなどによる自己PR動画の投稿と、ライブチャット3回で進める。「対面の面接と優劣なく判断できる」。人事などを統括する住谷猛執行役員は話す。画面内に会話の切り口になるグッズを置いて自己アピールするなど、会議室の面接では難しい学生の個性を見ることができるという。
自宅勤務だと、会議はテレビ会議になる。しかし、ビジネスチャットツールで都度進捗状況を確認し合えるので、会議の回数が減ったという企業も多い。会議だけではなく出張も減っている。新型コロナウィルスだけではなく、3月にサービスが始まった次世代通信規格「5G」によって3D映像などをリアルタイムで遅延なく送れるようになってきたことも関係する。
しかし、課題もある。自宅勤務の中、約6割の人が「ハンコ」のために出社したという調査がある。ハンコがないと稟議(りんぎ)を通らない。このような日本特有の状況は、こういう機会に見直していくべきだ。他にも、出社理由は上司と部下とのコミュニケーションが不便なことや、働き過ぎやさぼりの評価に対する不安がある。成果主義にし、自律的に仕事を進めることを奨励することが有効だ。ウェブでも面談でもよいが、上司と部下との面談を週1回など設ければメリハリがつく。柔軟な働き方を認めない企業には優秀な人材が集まりづらくなっている。テレワークの導入は人手不足の一助になり得る。皮肉な話だが、新型コロナウィルスは日本の働き方を変えた。