新型コロナによってわかった資本主義の危うさ
新型コロナによって経済活動が急激に冷え込んでいる。ここで生き残れるかどうかは、個々の企業における「持続可能性(サステナビリティー)」にかかっている。株主利益ばかりを追い求める先に、その答えはない。将来に渡って、選ばれる存在の企業になるにはどうあるべきか。多様なステークホルダー(利害関係者)への配慮とバランスのなかで自らの価値を見つめ、努力を重ねる経営がかつてなく必要になっている。(日経04-30)
国連が掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」の中には、健康と福祉の項目があり、感染症への対処も目標として盛り込まれている。だれもが豊かで公正な生活を送れる世界を目指すのがSDGsだ。この共有意識を企業の中で育むことが、自らの持続可能性を高める。
「持続可能性」を強く意識した経営を貫いてきた企業である英蘭日用品大手ユニリーバが、新型コロナの問題でとった対応が注目を集めている。取引先の資金繰りを助けるために支払期日の延長や収入補償を打ち出した。合わせて、世界の医療機関などに1億ユーロ(約120億円)相当の衛生関連の製品などの寄付を決めた。
米小売大手のウォルマートは新型コロナに対応して、特別賞与や臨時の雇用増に踏み出した。一方で、米ボーイングのように多額の自社株買いや配当を繰り返して株高を突き詰めた企業は、逆に苦しくなっている。
日本でも資本主義の父、渋沢栄一が「経済道徳合一」と掲げていた。企業の目的は利益の追求にある。ただしその根底には道徳が必要であって、国もしくは人々の繁栄に対して責任を持たなければならない、という意味だ。
企業は今、SDGsを理解し行動に移すことが求められている。いまから10年後には、ミレニアル世代が経済や社会の中核になる。そのとき、自分たちが選ばれる企業であるか。未来図を考え、そこから逆算し、いま取るべき戦略を定めて具体的な行動に移すことだ。