女性活躍法の施行で「坂の上の雲」は姿を見せるだろうか

 「坂の上の雲」の時代、女性たちは意気軒昂だった。という書き出しで、日本経済新聞(1/21)のコラムが一世紀前に輝いたヒロインたちの活躍ぶりを紹介しながら、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、つまり女性活躍法の4月施行に一抹の懸念を隠さない。あの時代、津田梅子(津田塾大学創始者)は英語教育で、NHK朝のドラマで知られる広岡浅子(日本女子大学創始者)は鉱山開発や銀行・保険業で坂の上をめざした。

 コラム子は、「梅子や浅子の活躍に見るように日本女性の能力は高い」と振り返りながら、それにしても、と4月からの施行を懸念する。それは日本社会に蔓延する形式主義に潜む危険だ。4月からは大企業や中堅企業など一定規模以上の会社は自主行動計画をつくって、女性の採用や昇進についての定量的な把握と分析を届ける義務が生じるのだが、これら資料を出す側も受け取る側も形式のチェックに終始して、本来の女性活躍の推進にはたしてつながるだろうかという懸念だ。
 女性の採用比率、男女別の勤務年数、労働時間、女性管理職比率の4項目を数字化して事足れりとするのであれば本末転倒というべきだろう。ある団体が主催するセミナーは、その名も「女性活躍法・直前対策!」。現場レベルで知恵を出し合い、担当者同士のネットワークでこの法律を乗り越えていこうという狙いのようだ。

 この法律がめざすものは、女性の活躍が社会的に期待され、職場での理解が深まることで有能な女性の掘り起し、キャリアアップをあきらめていた女性たちの参加にはずみをつけることだ。たんなる数字合わせに終わらないよう願わずにはいられない。新しい時代の「坂の上の雲」はそうやってこそ姿を見せてくれるだろう。(1-22 岩崎)