医療界での働き方改革に欠かせないものとは?
不規則な勤務や事故のリスクを背景に、全国的に産婦人科医の不足が課題となっている。
厚生労働省によると、全国の医療機関で産科・産婦人科に従事する医師の数は2016年時点で約1万1千人。10年前に比べて約1200人(12.6%)増えたものの、医師全体の伸び率(14.9%)を下回る。(日経12-11)
産科・産婦人科の医師の4割を女性が占めており、出産や育児で休職する女性医師が多い。女性医師は妊娠や出産でいったん一線を離れてしまうと、子育てとの両立が難しかったり、休職中に手術技術のブランクが生じたりするなどの理由で、その後の復職が難しいとされる。復帰しても非常勤のパート勤務が中心で、医局に戻るケースは少ないという。
不規則かつ、長時間勤務では仕事と家庭の両立は難しいであろう。医局にも働き方改革が必要である。そこで、出産や育児で現場から離れた女性医師の早期復帰を促し、解決につなげているのが三重大学医学部付属病院(津市)だ。
津市の住宅街にある診療所を医局が開設し、付属病院の産婦人科に所属する約20人の女性医師が交代で診察している。このため診療所では、医師の家庭の都合や希望に応じて、「午前のみ」「午後のみ」「週2日だけ」など柔軟なオーダーメード勤務を可能にしている。17年以降、6人の医師が出産後に医局へ復帰し、子育てを理由に辞めた人はいないという。
医局はローテーションで所属する医師を各地の関連病院に派遣し、地域医療を支えている側面もある。
三重大の産婦人科は県内の主要な関連7病院に約50人を派遣しているが、うち4割は女性だ。勤務先の病院に縛られず、各病院の繁閑に応じて医師が行き来できる独自の試みも導入するなどし、医師が心身ともに余裕を持てるようにしている。
こうした取り組みが功を奏し、同科の医師数は11年からほぼ倍増し、現在約100人が所属する。「人材確保が難しい地方大学としてはかなり多く、全国でも数少ない成功例」と日本産婦人科医会は言う。
医療界の働き方改革の実現には、交代で勤務できるよう豊富な人材が欠かせない。まるでオーダーメイドするかのように勤務時間が選べる環境は、女性医師が復職しやすいばかりでなく、医療界全体にとっても働きやすい職場になるだろう。