公私に線引き「勤務時間外はメールしません」

勤務時間外はメールも電話も反応しません――。海外で労働者の「つながらない権利」を保障する法令の導入が広がる。フランスやイタリアで企業に環境整備を義務づける法律が施行されたほか、米ニューヨーク市では条例案の審議が進む。日本ではまだ同種の社内制度を持つ企業は少数派だ。(日経02-27)これから広がっていくだろうか。

 

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンでは2015年7月、全社員対象に平日午後10時以降や土日にメールを送らないよう呼びかけた。同社部長は金曜日に送る部署内のメールは「返信は不要です」と添えてメールしている。以前は思いついたら休日でも即座にメールし、返信を求めていたが、今は急ぎのメール以外はすぐに送らず、下書きを保存して週明けに送信しているという。人事部の担当者は「海外との会議で深夜に連絡が必要な場合もあるので一律に義務づけたわけではないが、社員からは好評だ」と説明する。

三菱ふそうトラック・バスも14年12月から、希望する社員は休日にメールを受け取れなくなるシステムを導入。休暇中にメールを受信すると「休暇をいただいています。それ以降にご連絡ください」などのメッセージが自動返信される仕組みだ。担当者は「メールを自動的に遮断することで、オンとオフをしっかり区別できる」と話す。

 

労働者が勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否する権利は「つながらない権利」と呼ばれる。欧米では法制化が進んでいるが国内企業の動きは鈍い。

 

18年6月にNTTデータ経営研究所(東京)が会社員1100人に調査したところ「就業時間外に月1回以上、上司からの緊急性のない電話やメールに対応している」が32%。同種のメールに「毎日対応している」も9%あった。
IT(情報技術)機器の普及で休日でも連絡が取りやすくなった半面、どこまで負担として許されるのかは試行錯誤の段階のようだ。欧米で法制化が進んだのはテレワークなどが普及し、ノウハウの蓄積があるためだ。日本では働き方の多様化が始まったばかり。各組織でマナーとして定着させることから始めてはどうだろうか。