フリーランス人口が1119万人を超え、ようやく法整備
インターネット経由で請け負う仕事が広がり、独立自営で働くフリーランスが増えている。
働き方を自由に選べるようになる一方、弱い立場になる人も多い。そこに、ようやく法整備が入る。厚生労働省はフリーランスの仕事中のケガや病気を補償する労災保険の適用や、取引先企業と対等な立場を保つための契約ルールの整備を検討する。(日経ー0110)
特定の企業に専従せずに技能を提供することで報酬を得るフリーランスは、もともとカメラマンやコンサルタント、小説家など限られた領域の働き方だった。
しかし、経済のデジタル化やシェアエコノミーの進展によって、IT関連の独立技術者やネット経由で仕事を請け負う「クラウドワーカー」が拡大。2018年に1119万人を超えた。
時間や場所に縛られない働き方に魅力を感じ、会社勤めを辞めて独立する人が目立つ。介護や育児など様々な制約を抱えながら働く人の選択肢にもなっている。
こうした労働市場の拡大に伴い、浮上したのは働き方の課題だ。
一つは特定の企業に仕事を依存して実質的に労働者のような立場に置かれた人が多いことだ。労働政策研究・研修機構の17年の調査によると、1年間の仕事の取引先が1社しかない人が4割を占めた。主な取引先との契約内容を「協議して決定した」人は47%にとどまり、「取引先が一方的に決定」が24%、「やり取りはなかった」も14%に上った。
厚労省はこうした働き方を「雇用類似」と位置づけ、労働法制による一定の保護を導入する方向だ。
さらに、フリーランスへの労災保険の適用も検討する。通常、労働者を雇う企業が保険料を全額負担するが、フリーランスは自己負担とする方向で厚労省の有識者会議で検討する。
昨年2月、公正取引委員会も独占禁止法でフリーランスを保護する運用指針をまとめている。
企業が秘密保持を盾に他社との契約を過度に制限したり、イラストやソフトなどの成果物に必要以上に転用制限をかけたりすれば、「優越的地位の乱用」にあたる恐れがあると指摘。賃金の上昇を防ぐために企業間で引き抜き禁止を取り決めることも独占禁止法違反になりうると明示した。
働き方の多様性に対し、法が一歩後から検討されるのでは遅い。