レイシャルハラスメント。難しいのはこれからだ

職場のダイバーシティマネジメントが進むにつれ、日本企業がこれまで経験したことのない事態が現れてきた。「レイシャルハラスメント」だ。人種、民族、国籍の異なる社員が同じオフィスで働く難しさを、朝日新聞(9-18)が伝えている。

 

レイシャル(racial)とは、「人種に関わる」「人種についての」といった意味合いだ。レイシャルハラスメントはこれらの偏見にもとづいた不適切な言動や行為であり、とくに職場では日本人しかいないことを前提とした会話や特定のルーツに結びつけた評価などが問題になる。同紙はこんな例をあげている。

ドイツ人の父と日本人の母を持ち、もう20年間、日本に住むSさん(女性・41歳)はその種の経験を何度もしてきた。取引先からは「日本語、話せるの?」「本当に日本人?」と何度も聞かれ、会社に相談しても「外国人慣れしていない人も多いから」と受け流される。Sさんは家に帰っても、「日本人」の素晴らしさを声高に訴えるテレビ番組や本が多いことが気になる。そこで言う『日本人』に私のような存在は含まれているのかと考えてしまうのだ。あるNPO法人が職場のレイシャルハラスメントについて外国にルーツを持つ社員102人にアンケートをとった。職場で日本人しかいない前提での会話や組織運営がされていると感じたことがある人は86人、84.3%にのぼった。「あなたの国はどうして○○なの?」と国の代表者のように扱われたり、「外国人だから考え方が違う」と、ルーツを考え方や人格と結びつけて評価されるなどの経験をほとんどの人がしている。

 

ダイバーシティマネジメントは、職場における女性の活用から、非正規社員の待遇、外国人従業員との関係へとしだいに軸足を広げてきた。日本人の理解は浅く、問題意識の外にあるとあって、難しいのはこれからだ。