セクハラ相談1万件の日本の職場が「ダイバーシティ」を議論できるのか
ハラスメント。日本語でいえば「嫌がらせ」だが、カタカナになると嫌がらせの度合いが深刻に聞こえる。この言葉が当たり前のように使われるようになったのはいつ頃のことからか。70年代のアメリカの女性運動家が言い出したのに始まり、日本でも80年代から一般化したようだ。そして30余年の月日を経てもハラスメントの勢いは止まらない。あらゆる種類のハラスメントが働きやすい職場の足を引っ張っていると読売新聞が報じている。
全国の労働局に寄せられるセクハラ相談は毎年1万件以上にのぼる。マタハラも目立って増えており、厚生労働省の調べでは正社員の2割、派遣社員の5割が被害の体験者だという。解雇、雇い止め、降格のほか、「迷惑だ」という発言を浴びることもある。権力を背に精神的・身体的苦痛を与えるパワーハラスメント=パワハラもある。近年、このように数々のハラスメントが問題になってきたのは、職場の中で非正規労働者など弱い立場の人が増え、そうした地位の差がハラスメントを生んでいるという分析をする人もいる。ハラスメント対策は働きやすい職場にするために不可欠だと同紙は結んでいる。
ハラスメントの実情を知って連想するのはこのところのダイバーシティ論議だ。いかなる多様性も受け入れる職場にあって、国籍、性別、宗教といったものがトラブルの原因になるであろうことは十分に予想されることだ。それによって生じる摩擦や誤解や差別をいかに排除していくのか。そういう入口に立っていながらこれしきの嫌がらせすら排除できない日本の職場は苦々しい。