提言:マッチョよさらば! サードプレイス型コミュニケーション空間の提言
野嶋 朗

美容業界の話ですが、20−40代の顧客の声を聞くと、どの世代でもおしなべて人気があるのは男性よりも女性美容師です。支持率でいうと3〜4倍もの差があります。男性美容師受難の時代なのです。女性美容師が評価されている背景には何があるのか。女性活躍推進(法)に向けた美容業界からの小さな提言を行ってみたいと思います。

 顧客側の評価から観るとスタイルや技術に関する要素ではあまり性差はありません。むしろ技術面の評価では男性美容師の方が高い。女性美容師が評価されているのは共感や傾聴、気遣いといったコミュニケーションの要素。身体接触が伴い、女性の命とも言える髪を扱う美容師との関係構築では女性美容師がより評価されるのもうなづけます。
 
 さらに現在の消費マインドからも影響を受けているように感じます。例えば、昨今の広告表現の多くはマッチョではなくやわらかくフェミニンなものになっています。あるいはシェアドワードローブ(男女が共通して使える)のような中間的なアイテムの流行。ジェンダーレスな(男女の違いを超えたファッション傾向)売り場も増えてきました。ファッション系の売り場の昨今は、男性フロア、女性フロアといった括りが今や古ぼけて見えるほどです。シェアドワードローブには節約的な要素もありますが、女性美容師人気やマッチョの衰退なども合わせて考えてみると、自然体とかリラックスとか共感とか、そんな意識が売り場や店舗に強く影響するようになってきたと思えるのです。
 
 私は講演などで「サードプレイス型サロン」についてお話をすることがあります。ファーストが家庭、セカンドが職場。それに匹敵する3番目の居場所という意味です。そもそもサロンの語源は同好の方々が茶の間に集い談話する社交の場であり、。それがサードプレイス型サロンです。そんなサロンを作るには対話を中心としたコミュニケーション空間のデザインと、同好のコンテンツを持ちましょうという話です。お客様との接点は売り場ではなく「お買い場」だという話を聞いた事があります。売り手主体ではなく買い手主体で考える。少し言葉を変えるだけでも随分と印象が変わりますね。そのお買い場としての力を高めるためにも対話型コミュニケーションを前提にした店舗のデザインが重要だと思うのです。これからの商業施設や店舗はまず第一に、顧客とのコミュニケーション設計から発想しなければいけないと思います。そのためにはマッチョな男性の思想はいらないんですね。女性の立場での居心地と、働きやすく成果の出しやすい空間のあり方を聞いて、男は実現に向かって設計すれば良いのではないでしょうか。それは店舗だけでなくオフィスにも通じる話だと思うのです。

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