次世代の女性ファンをターゲットとした商品づくりの背景には
ナッツ業界先駆者としての矜持があった

兵庫県神戸市に本社を置く東洋ナッツ食品株式会社は、1959年に創業した日本で最初のナッツメーカー。ナッツの輸入から焙煎、加工、包装までを一貫して行う日本国内では数少ない専業メーカーであり、ナッツ本来の美味しさを引き出す加工技術を独自開発するなど、「TON’S BRAND」を中心に常に新しい展開で業界をリードしています。
今回紹介するのは、ナッツの新たな市場を開拓するために開発された「Terra grano(テラ グラーノ)」。アーモンドとクルミをそれぞれ手のひらサイズの個包装容器に充填した5カップを1箱にセットアップし、1日推奨量のナッツを平日の1週間、手軽に摂取する習慣を提案するものです。新しい切り口でブランドを立ち上げた経緯やこれまでになかったファッション要素を取り入れた商品づくりについて、プロジェクトメンバーの4人にお話をお聞きしました。

プロジェクトリーダーとなったフロンティア開発室 グループマネージャーの大津山 リカさん

プロジェクトリーダーとなったフロンティア開発室 グループマネージャーの大津山 リカさん。自社ブランドを持つメーカーで働きたいと、大学卒業後に東洋ナッツ食品に入社。以来、デザイン業務に携わり、パッケージの規格決定から、商品のブランディング、販促物のデザイン、ホームページ作成、広告など製品設計の仕上げ部分を担当する。2016年に、各部門のスペシャリストが集まって、マーケティング、研究室、通販、広報、製品企画などを取り組むフロンティア開発室が誕生し、グループマネージャーに指名される。

次世代をターゲットとするブランディングと商品づくりにチャレンジ

ナッツメーカーの草分けとして、ナッツ類の国内トップクラスの売上を誇る東洋ナッツ食品は、60周年を迎える2019年12月に向けて、さまざまなブランディングにチャレンジしている。2018年10月に発売した「Terra grano」開発プロジェクトもその一環だ。
2017年8月、当時フロンティア開発室の室長を兼任していた中島 洋人社長の肝いりでプロジェクトがスタート。メンバーは、グループマネージャーの大津山さんと研究員の坂本さん、そして、今までにない売場へのチャレンジとなることから、営業経験者であるサブマネージャーの相良さんと池田さんが加わり、4人で新しい切り口の商品開発に挑むことになった。

「Terra grano」の開発メンバー

「Terra grano」の開発メンバー。左から、池田 義明さん、研究員の坂本 拓也さん、グループマネージャーの大津山 リカさん、サブマネージャーの相良 敏彦さん。

 
かつてはお酒のおつまみの定番であったナッツも、健康・美容ブームの後押しで年々取り扱い企業が増加し、現在は450~500億円ほどの市場規模へと成長。「ナッツは栄養価が高く、美容と健康に良い」というイメージは世間に広く浸透してきている。しかしながら、消費者がナッツを選ぶ際に重視するのは、昔と変わらず「価格」だという。よりお得なものや安いものを買おうとする「価格競争」が続いているのが現状だ。
「味や品質といったナッツの実力(みりょく)が購入動機にならないということは、当社の商品が差別化できていないということです。創業以来、当社がこだわってきた加工技術から生まれる真のナッツの美味しさを未だ伝えきれていないことに歯がゆさを感じていました。どうすればナッツの美味しさを消費者に認知してもらえるのか、そこが私たちの大きな課題でした」(相良さん)。

同社は、アーモンドなら遠赤焙煎ロースト製法、クルミならハイブリッド蒸気ロースト製法といった具合に、他社の追随を許さない高度な製造技術によって、ナッツそれぞれの持ち味を生かす風味や食感を追求してきた。非効率といわれながらも同業他社よりも多くの機械設備を導入し、より多くの時間をかけてナッツの製造を行ってきたのは、ナッツ専業メーカーとして、「ナッツの価値」を世に広げていくためだ。
「創立60年に向けて、これまで積み重ねてきた当社の実績や技術力を集結させて、本当のナッツの美味しさを知ってもらえる商品を創り出し、品質だけでなく見た目にもこだわった商品で新たな市場を切り拓こうと新ブランド開発プロジェクトをスタートすることになりました」(大津山さん)。
 

仕事や家事、育児など、忙しい毎日を送る現代女性を応援するナッツ

「約1年の開発期間を経て、大津山さんらが世に送り出したのは、「ファッション」要素を取り入れたおしゃれなルックスのナッツ「Terra grano(テラ グラーノ)」だ。「忙しすぎ、頑張りすぎ、我慢しすぎ。“すぎる”あなたにちょうどいいスタイル」をコンセプトとし、商品そのものが、仕事や家事、育児など、忙しい毎日を送る現代女性へのエールにもなっている。いわば、“働く女性を応援するナッツ”だ。

働く女性を応援するナッツ Terra grano(テラ グラーノ)

“働く女性を応援するナッツ”「Terra grano(テラ グラーノ)」。ラインナップは、「Terra grano walnut(クルミ)」(左)と「Terra grano almond(アーモンド)」(右)の二種類。いずれも5個入り、各1,080円(税込)。同社1日推奨量のナッツを女性の手のひらサイズのカップに閉じ込め、ワーキングデー(週5日)をイメージしてセットアップした。いずれも5個入り、各1,080円(税込)。

 
「現在のナッツの主な購買層は、40~60代の女性。しかし、この世代は既存の製品ラインナップで、開拓済みだったので、女性の購買層をもっと広げたいという想いがありました。そこで、一定の経済力があり、情報感度が高く、さらに発信力もある20代後半から30代女性をターゲットにしてはどうかと考えたんです」(大津山さん)。
商品開発に当たっては、ターゲット層となる女性たちに独自アンケートを実施。その結果、彼女たちが間食に使う費用が1日100円~300円であること、リラックスタイムにおやつを食べる習慣があることがわかってきた。また、間食そのものよりも、リラックスタイムにお金をかける傾向があることなど、食シーンやライフスタイルも浮き彫りに。多くの気づきを得た開発メンバーは、女性がリラックスタイムに軽くナッツを摘まむシーンはどんな感じだろうとイメージを膨らませてゆく。

ナッツのパッケージといえば、ピロー包装やチャック袋などの袋製か、脱酸素剤を封入した缶製が主流だ。缶や袋の商品を開発するなら、同社にはすでに完成されたノウハウがあった。しかし、健康のため習慣的に食べる層を中心とした新ターゲットである働く女性が、オフィスや家庭で、手軽に、カジュアルに、ナッツをつまむシーンを想像すると、従来のパッケージでは違和感がある。
「そのシーンに合う容器の形は?」
「その容器が生きるデザインは?」
美容食としてのイメージが強くなっているナッツにふさわしいパッケージを作り上げるため、缶でもない、袋でもない、新しい第三の容器の開発に取り組むことになった。

すべての工程において“最高”を重ねていく、妥協のない商品づくり

「パッケージを手のひらサイズの半球型のカップにしてみることを考えました。ナッツは酸化すると味や風味が大きく変化するため、新鮮なナッツの味わいを常に楽しんでもらうためには、開けるたびに品質が落ちていくようなパッケージではなく、開けたときにできたての美味しさを味わえる食べ切りサイズにする必要がありました」(相良さん)

アイデアを具体化するときに役立ったのが、カプセルトイ『ガチャガチャ』の容器だった。容器サンプルを作るには大きなコストがかかるため、サイズ感が近いガチャガチャの容器を使用して、文字通り、理想を形にしていく作業を何度も何度も繰り返した。いくつもの容器の底をバーナーで炙って溶かし、傾斜を付けて、ナッツがつまみやすく、かつ、こぼれない角度を導き出していった。

画期的なパッケージをオリジナルで開発しようと考えた

容器の開発に当たっては、まずはゼリーやプリン、パックごはん、お惣菜など、既存のカップ容器やトレー容器を集めてきて検討。品質をしっかりと保つバリア性を維持しながら、どこもまだ作ったことのない画期的なパッケージをオリジナルで開発しようと考えた。

 
商品開発に当たって最も大きなハードルとなったのは、商品イメージの要となる「容器デザインの開発」とナッツメーカーとしての原点である「美味しさの維持」だった。後者を実現したのは、研究員の坂本さんの功績だ。

同社では、消費者にナッツをおいしく食べてもらうため、通常の袋製品で180日、缶製品で360~450日という他社よりも短い賞味期限を設定。品質保持には缶製品が一番良いとされているが、缶製品に入れられる脱酸素剤は、劣化の原因となる酸素を吸収するのと同時にナッツの香りまで一緒に吸収してしまうという欠点があった。
「缶や袋とは違う容器でナッツの品質を維持するのは、既存の方法では難しい。そこで、ナッツの劣化の原因となる酸素を抜いてから窒素ガスを封入する『新鮮充填パック製法』をナッツ用途として初めて採用しました。これによって、従来の袋製品に比べて残存酸素置換率が90%向上し、できたてのフレッシュな味や香りが味わえる商品になりました」(坂本さん)。

ナッツの美味しさを閉じ込める「新鮮充填パック製法」を開発した坂本さん

ナッツの美味しさを閉じ込める「新鮮充填パック製法」を開発した坂本さん(写真左)は、プロジェクトメンバーの中では唯一の研究職だ。

 

「新鮮充填パック製法」で、いつでもできたての味と香りが味わえるようになった。

「新鮮充填パック製法」で、いつでもできたての味と香りが味わえるようになった。ナッツがうっすらと見える半透明のカップには、羽を模した小さな手で相手に差し出すようなおもてなしの心を可愛く表現したデザインが施されている。新形状のカップ容器は、平成30年11月7日に実用新案登録済み(第3219109号)。

 
しかし、容器メーカーと開発メンバーの二人三脚で開発した新形状のカップシール容器を使う「Terra grano」は、工場泣かせの商品でもあった。底を斜めに切り込んだ形状の容器は初の試みであり、従来の工場のラインは使用できない。この商品のためのライン設計を一から行う必要があった。
さらに、ロースト直後の風味が従来の袋製品よりも長く楽しめる商品にするため、加工後素早く包装するよう工場に要望したところ、「工場スタッフの負担が大きすぎてそんなことはとてもじゃないが無理だ」と敬遠されることに。
しかし、メンバーたちはひるまなかった。良質な商品の安定的な供給のため、工場担当者を説き伏せ機械メーカーとも協力しながら、幾度も打ち合わせを重ねて険しい道を切り拓いていった。
「商品設計はどうしても最後に妥協が出てくるものですが、『Terra grano』に関しては、このようにすべての部分において“最高”を重ねていくことで一切の妥協もなく商品開発をやり遂げました」(大津山さん)。

オフィスや自宅など様々な生活シーンになじむデザインでナッツを習慣づけ

Terra granoの縦型のBOXの中には、同社1日推奨量のナッツが5つのカップ容器に入って5段に分けて並べられている。日常の様々なシーンで、ちょっとした気分転換やリラックスタイムに、ナッツを習慣化できるよう工夫。オフィスのデスクやリビング、キッチンに置いておきたくなるようなオシャレで目を引くデザインが特長となっている。
「アーモンドは、植物性たんぱく質、食物繊維、鉄分、カルシウム、ビタミン E を多く含み、クルミは、オメガ 3 脂肪酸がナッツ類で最も多く含まれている食品。天然のサプリメントとして、毎日続けて食べてもらうことが『美』へ繋がります。しかし、いくら体に良い、美容に良いといっても、毎日同じものを食べ続けると飽きてしまうため、ワーキングデーの5個だけをセットしました。これは、『あと2日は好きなものを食べて』という私たちからのメッセージでもあります」(大津山さん)。
また、忙しいとついつい食べ忘れてしまうこともあるため、食べた分がひと目でわかるように、パッケージは縦型のスライド式とした。自分用に利用開始日や目標など書き込んだり、プレゼントとしてひとことメッセージを書き込んだりと用途に合わせて活用できる仕様となっている。

メッセージが書き込めるフタや食べ忘れを防ぐスライド式の形状など、次世代の新しいターゲットの女性に刺さる様々な工夫が施されたパッケージ

メッセージが書き込めるフタや食べ忘れを防ぐスライド式の形状など、次世代の新しいターゲットの女性に刺さる様々な工夫が施されたパッケージ。自分自身へのご褒美として、応援したい誰かに贈るプレゼントにもぴったり。

頑張る女性に寄り添う商品として販売拡大を目指す

これまで商品PRはほとんど行ったことがないという同社だが、今回は初の試みとして「Terra grano」ブランド専用のホームページを立ち上げ、コミュニケーションにおいても働く女性に寄り添った取り組みを展開。Facebookでは、女性に“憧れられる女性”がどんなライフスタイルを送っているのかバトン形式で紹介していく「Terra granoバトン」を配信している。また、間食をナッツだけにすることで体がどのように変化してくのか検証していくインフルエンサー3名によるモニター企画などもこれから実施していく予定だ。

Instagramでは、「Terra grano」が日常をかわいくおしゃれに彩るイメージを展開し、そのまま商品を購入できるようにしている

女性の購入動機を上げるためには「イメージ訴求」が欠かせない。Instagramでは、「Terra grano」が日常をかわいくおしゃれに彩るイメージを展開し、そのまま商品を購入できるようにしている。

 
未知の領域へのチャレンジとなるため、一筋縄ではいかないことはもとより承知の上。未来のファンに向けて「ナッツの価値」を伝えていくために、販売チャネルの開拓など営業面をさらに強化していきたいと相良さんは言う。
「ヨガスタジオやスポーツジム、美容院、アパレルショップなど、『美』に興味のある女性が集まる場所での販売や、価格ではなく商品の価値やブランドにマッチした新たな販路を模索中です。フレッシュさが維持できる食べ切りサイズ容器という特性を生かして、バーなどのナイトシーンでの展開、花嫁美容などウェディング需要へのアプローチも視野に入れています。食べて、美味しさを知った方が、『ギフト』として誰かにプレゼントするという広がりも今後期待できそうです」(相良さん)。

これからは営業部門出身の相良さんと池田さんの活躍に期待が掛かる

同社がすでに販売ノウハウを持つスーパーやコンビニといった販売チャネルとはまったく異なるチャネルの開拓となるため、これからは営業部門出身の相良さんと池田さんの活躍に期待が掛かる。

 
味の妥協は一切行わない姿勢を取ってきた東洋ナッツ食品株式会社。その守り続けて来た味へのこだわりを「Terra grano」を通して働く女性たちに伝え、ナッツファンになってもらうことがプロジェクトメンバーの目下の目標だ。
「働く女性たちに『Terra grano』を食べてもらうことで、毎日をハッピーに過ごしてほしいというのが私の願い。そして、『これしか食べたくない!』と言ってもらえる商品に育てていくことが究極の目標です」と大津山さんは意気込む。

2003年に発売した同社の「無塩シリーズ」は、業界の先駆け的商品となり、「食塩無添加ナッツ」をどこでも買えるナッツの定番商品とすることに大きく貢献した。
次は「Terra grano」がナッツ業界に新旋風を巻き起こすのだろうか。大津山さんたちのチャレンジからますます目が離せない。

 

提供:東洋ナッツ食品株式会社 https://www.toyonut.co.jp/
Terra granoブランドサイト http://terragrano.jp
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