ルゥルゥ商會は、“人と人”や“人とコト”をつないで形を作って行くことをミッションとした会社です。代表の地野裕子さんが中心となって、さまざまなものを巻き込み、コーディネートして全世界に情報を発信しています。
事業は多岐にわたりますが、そのひとつのプロジェクトが「iT YUCASi」。目に見えない仕事が多い中で、素材に形を持たせた。視覚をはじめ、五感は共通言語であるという考えから、みた人がそのものが持つ背景を知りたいと思ってほしい。という考えから、日本の素材と職人の技にこだわり、和と洋の中間に位置するアイテムをラインナップ。リッチな富裕層に人気で、特に海外から注目されています。
代表を務める地野裕子さんと、ビジネスパートナーのおひとりである中嶋健さんお話を聞きました。
代表の地野裕子さん(中央)と、ビジネスパートナーの一人、中嶋健さん(左)、アシスタントの並河さん(右)。
東京・寺田倉庫B&Cホールで開催された中川政七商店主催『大日本市』のブースにて。
「iT YUCASi」のさまざまなアイテムが並ぶ。
地野裕子
同志社大学神学部神学科卒。英国留学経験ののち、日興コーディアル証券株式会社入社。外資系銀行勤務を経て、コーディネート事業を立ち上げる。京都芸術デザイン専門学校非常勤講師。一般社団法人ビンテージエイジクラブ京都支部長。
主な受賞歴
近畿経済産業局LED関西 女性起業家プロジェクト2018ファイナリスト
京都アントレプレナー京都府知事優秀賞
京都文化ベンチャーコンペティション京都府知事奨励賞受賞
“人と人”や“人とコト”をつないで、コーディネートする
「ルゥルゥ商會」という、レトロで、かわいい社名は、フランスの作家・ジィップが書いた『マドゥモァゼル・ルウルウ』に登場する主人公の名前、ルウルウに由来する。
「アドバイザーのお一人が、おてんばで、おしゃまな少女のルウルウと私が似ている、と言って付けてくれました。でも、最初、『私のコンセプトが何も入ってへんやん』と思ったんですが、「だんだん馴染んでしっくりきた。」と代表取締役の地野裕子さん。インパクトがあるし、覚えてもらいやすい、それになにより、社名から何をやっているのかわからないのがいい、と笑う。『マドゥモァゼル・ルウルウ』は未読ながら、京都弁で明るくしゃべる地野さんは確かに、おてんばで、おしゃまな感じだ。
「ルゥルゥ商會は、webサイトに『様々な形でコミュニケーションをデザインする会社です』と掲げている通り、ルゥルゥ商會がハブとなって、“人と人”や“人とコト”をつないで形を作って行くことをミッションにしています」と地野さん。
ルゥルゥ商會では多岐にわたるプロジェクトが随時、進行している。その多彩さは、過去に手がけた例を見るだけでも窺い知ることができる。例えば、京都市内の歴史的建造物で行われた国際写真フェスティバルのロケーションとPR、モナコ発の国際会議「MAGIC KYOTO 2018」の運営協力、海外ブランドの輸入・国内ブランディングといった具合だ。
「私がやりたかったのは、“人と人”や“人とコト”をつなぐ、“コーディネイト”。でも、日本では“コーディネイト”が仕事として成立しずらいんですよ。お金を出してもコネクションは買えません。なのに無償で人を紹介するのが当たり前、と思っている人がすごく多いんです」(地野さん)
その怒りはよくわかる。だからこそ、地野さんは“人との信頼”を大切にし、日本と海外をつなぐコーディネイトや、企業と企業をつなぐコーディネイトに奮闘している。
また、学生と社会をつなぐコーディネイトもライフワークとしており、プロダクトデザインを勉強している多摩美術大学の学生と、アメリカのアートセンターから来た学生に京都の町を紹介する、フィールドワークのコーディネイトになどにも取り組んでいる。
「『どんな職業なんですか?』と聞かれたら、『私自身が職業です』と答えています(笑)」とかっこいい。
人の好奇心を刺激する、「iT YUCASi」
そんな地野さんが立ち上げたプロジェクトに「iT YUCASi」がある。
「“奥ゆかしい”という言葉がありますよね。慎み深く、魅力的な人を“奥ゆかしい人”などと言います。この“奥ゆかしい”はもともと、“ゆかし”からきている言葉です。“ゆかし”とは、『見たい』『聞きたい』『知りたい』という、人の好奇心を表しています。誰でも『これは何だろう?』と思うことはありますよね。そんな、『これは何だろう?』と思うようなプロダクトを作りたいと思ったんです」(地野さん)
「iT YUCASi」はファッションをキーワードに、クラッチバックやトートバック、財布、コインケースからネックレス、ピアス、食器類とさまざまなアイテムをラインナップしている。
また、それらアイテムは、「iT YUCASi」のオリジナルだけでなく、優れたアーティストとコラボレーションもしている。
「例えば、食器類は、SIONE(シオネ)という、LEXUS TAKUMI PROJECTで、2018年のファイナリストでもある、SHOWKOさんという女性作家とのコラボレーションで生まれたものです。彼女とはホテルの部屋も京都で2019年4月開業予定のBnA Alter Museum(http://bnaaltermuseum.com/)というホテルの部屋を手がけています。現在、未来という時間を陶器がいかに手紙のように次の世代に繋ぐかということを作品に」(地野さん)
このようなパートナーは多くいる。そのひとりが中嶋健さんだ。
中嶋さんは京都の染色工房で5年ほど務めた後、染色をもっと若い人に興味を持ってくれるようなプロダクトに落とし込みたいと思い、独立。京都を拠点として染め物のブランド「COMMON BRIDGE」を立ち上げた。
その、中嶋さんが「iT YUCASi」とコラボレーションという形で染めを手がけたのはストールだ。
「ストールの素材に“ちりめん”を使用し、着物を染める“引き染め”で、京都の型染屋さんの職人が手で染めました。つまり、ストールのなかに素材の良さと職人の技を落とし込んだ商品になっています」と中嶋さん。
特に中嶋さんが大事にしているのは染め方・・・・・・。
「手染めは、染めたときの環境に左右されます。夏と冬でも色の出方に若干の違いが出ます。にじみ方が変わってくることもあります。でも、全部を均一化させるのではなく、その味わいを残すことで、個々の商品の特徴になります。それが僕の愛着になったり、染めた空気感を閉じ込めることにつながります」と、手作りの良さを心を込めて語る。
地野さんは、そんな中嶋さんの作品をプロデュースするとともに、中嶋さんそのものをプロデュースしているのだという。
「個人でやっているので、ついつい、自分の考えに固執してしまいます。そんなとき、地野さんから『こんなことをやってみたら、どう?』」と言われると、新しい発想が生まれたりします」と中嶋さん。
地野さんも「私には中嶋さんのようなパートナーがたくさんいてはるんで、いろんな取組をすることで、発信力も大きくなると思うんです」と力を込める。
日本の素材は海外が認める優れもの
「iT YUCASi」のコアとなる商品に、クラッチバックとトートバック、財布がある。
「今まで住んだことのある場所は、ロンドン、オックスフォード、パリ、ミラノ、マドリッド、NYをはじめ、欧米の様々な場所に滞在した。その経験を生かし、29歳のころ、ヨーロッパやニューヨークのメゾンに京都の素材を売り込むことを行っていました。でも、それだと素材を納品しておしまいなんですね。それで素材を使ったマテリアルの提案をする方が、興味を持つんじゃないかと思ったんです」(地野さん)
素材を売り込みに行くとさまざまな引き合いがあった、驚くほど有名な巨大企業から「使いたい」と連絡がきた。自分が「良い」と思った素材は、世界も認める素材だったと改めて知る。
「優れた日本の素材が海外の有名ブランドに使われて、製品になってロゴが付いて逆輸入で日本に来て、みんながありがたがって買う、というのはメチャ、あります。灯台下暗しなんです」(地野さん)
そんな体験から、日本の良い素材をデベロップメントして、ブランディングして商品化しよう、となったのだという。
そして生まれのが「iT YUCASi」のクラッチバック、トートバック、財布だ。
商品のこだわりはたくさんあるが、最もこだわったのは、製造。京都には分業制、という文化がある。日本産の素材で、日本の職人さんで作る。
「1社だけで完成しない商品がこだわりです。ルゥルゥ商會がコーディネイトしている意味はそこにあります」(地野さん)
商品はエッジなテイストで、和と洋の間を狙っているとのこと。
「ルゥルゥ商會はいろんなボーダー(境)をなくしていこう、という想いもあります、和ですか?洋ですか?というのはダサいな、と思っていて、真ん中を行くようにしています」(地野さん)
そのため、和装にも洋装に合う。ただし、ヨーロッパから見たら、モダンジャパニズムとして捉えられているという。
そして、ターゲットは富裕層。
「ラグジュアリーラインで、30代がメインターゲットなんですが、実際に購入されるのは40、50代が多いのが特徴です」(地野さん)
日本より海外での評判が良く、有名なファッション雑誌『VOGUE』でよく取り上げられるという。目の離せないブランドになりそうだ。
人を巻き込んでビジネスにしていく
地野さんと中嶋さんが知り合ったのは、中嶋さんの活動を地野さんが注目していたことからだという。
「京都で染はやってらっしゃる人はたくさんいますが、自分で新しいスタイルを提案している人はなかなかいないんです。中嶋さんはすごく面白い存在だと思いました」(地野さん)
ひとりで頑張っている中嶋さんをもっと注目させたい、と思ったとのこと。
中嶋さんは「私は地野さんがやられていることにすごく共感できるんです」と語る。昔ながら残っている良いものはある。でも、それをコーディネイトできる人はいない。技術があっても発信できなくて困っている人多い。地野さんはそんな人をどんどん巻き込んでビジネスにして行く。そこが凄いと評価する。
「地野さんは僕が作ったものを見て、『一緒に京都から、大事にしたいものを発信していけたらいいね』と言ってくれた。そんな地野さんの考えに賛成できたし、作り手としての想いを伝えられるのは嬉しいです」とにこり。
地野さんは「京都に人はたくさん来るんですが、買っていくのはメインドンチャイナだったりするんです。だから、京都で頑張っている人をどんどん開拓して、一緒にやる。マンパワーって重要だと思うんです」と語る。
「地野さんは自分のことを置いて、僕なんかも支援してくれる。僕は地野さんがきっかけで、新しい人とつながったことがたくさんあります」と中嶋さん。地野さんと一緒にやっていると面白いと言う。
地野さんは「気力だけでやってます」と笑う。
お二人は息の合ったビジネスパートナーだと感じる。
やりたいことをやるために継続する
お二人に将来の野望を聞いてみた。
中嶋さんは「世界に出たいですね。有名になりたいというのではなく、持っている技術で世界と勝負してみたい。日本の文化をちゃんと伝えたいですね」とのこと。
高尚な伝統工芸を目指すのではなく、かつ、土着的な民族工芸でもなく、日用品として使える生活工芸にこだわりたいと語る。陶器類では作家性の高い生活工芸が出てきたが、染色では際立った作家性のものは少ない。もっと、染色に注目されるようなきっかけを作りたいと目を輝かせる。
「日本にはいろんな染め方があります。染め具合で選んでもらうことが当たり前になることを目指したい。」(中嶋さん)
地野さんは「“世代と世代”をつなぐプロジェクトとして、20歳と80歳が共に働く環境も作りたいと考えています」と言う。80年で経験し、蓄積してきたことを20歳に伝え、共同でプロダクトを創り出す。そして最終的には国内で生産したものを海外で展開するとのこと。
「歳に関係なく、歳をとった人と若い人が一緒に働く環境は今後の日本に必要になってくるんじゃないかと思うんですよ。定年を迎えたから引退、というのはもったいない。もっと経験を活かせられる世の中を作りたい。ちょっと壮大なんです(笑)」(地野さん)
二人は「会社は継続が重要。もちろん、続けることは難しい。それでも続けないとね」ともらす。
そんな地野さんは、会社を大きくしたいとか、年商をいくらにする、といったことにはあまり興味がないらしい。会社を続けるのはやりたいことがたくさんあるから。「チャレンジすることはいっぱいある。『やる!』と言ったことはやるしかないと思ってる」と元気に語った。夢は果てしなさそうだ。
提供:株式会社 ルゥルゥ商會
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