テレビショッピングの専用チャンネル「ショップチャンネル」で2013年から連続で販売され続けている化粧品があります。美容家の藤田陽子さんが開発した「DefineBeauty(ディファインビューティー)」の製品です。コスメ業界でも名の知れたハイブランドやメイクアップアーティスト、そして専門家などが開発した製品がしのぎを削る「ショップチャンネル」において、長く取り扱われるということは、それだけでステータスといっても過言ではないほどの重みがあります。特に2016年から販売を開始した『モイスチャー パッククレンジング』は好評で、より完成度を高めるために、現在リニューアルを計画中だとか。『モイスチャー パッククレンジング』の特徴や開発の苦労などを中心に話をうかがいました。
株式会社Solbino 代表取締役 藤田陽子さん
自分の肌トラブルを改善したい。その一心で起業へ
ファッション業界で多忙な日々を過ごしてきた藤田さんは、30代後半くらいから体調を崩しがちになった。藤田さんが一番ストレスを感じたのは肌が荒れてカサカサになったことだ。漢方を処方してもらったり、様々なブランドの化粧品を試すものの、肌の状態が改善されることはなかった。産婦人科で診てもらうと、若年性更年期と診断される。女性ホルモンのバランスが崩れたことが原因だったのだ。
「お客様の魅力を引き出し、キレイにして差し上げる仕事が大好きだったのに、自分に自信が持てなくなって、仕事が辛くなってしまったのです。何をしても改善が見られないお肌に悩み、それならば美容を本気で研究して、自分の手でこのお肌を何とかしようと決心したのがディファインビューティーの始まりです」。
Define Byautyの商品ラインアップ。左から、モイスチャーパッククレンジング、レベレンス・エッセンス、ジュエルクリームミスト、3ディフィニション・ビューティ・エマルジョン、レベレンス・ジュエルクリーム
ファッション業界に長く携わってきた藤田さんだが、コスメ業界は未経験。そこで友人のつてを頼って美容家を紹介してもらい、自身が美容家になるべく勉強を始める。
世界的なエステシャンの資格であるITECや、南カリフォルニア大学のジェロントロジー(加齢学)学位を取得するなど、現在も向学心旺盛な藤田さんが、製品開発の段階で特に注目したのが、「プロテオグリカン」という成分だ。
弘前大学の医学部博士・中根明夫教授(右)と。藤田さんの「プロテオグリカン愛」が伝わり、直接話をうかがうことができた。
医療の分野でも応用されているプロテオグリカン。青森県では一般社団法人あおもりPG推進協議会を立ち上げ、県を挙げて研究活動に取り組んでいるほど注目されている。
「DefineBeauty」では保湿力に優れているプロテオグリガンを、ほぼすべての製品に使用している。プロテオグリガン研究の権威である弘前大学の中根明夫教授を訪ねてレクチャーを受けるなど、藤田さんは自分の肌に合う化粧品の開発に明け暮れた。
クレンジングなら、“お試し”のハードルが低い
最初に開発したのはクレンジングだ。
藤田さんは皮膚科の医師から、「クレンジングを変えると、肌の調子が変わる」とアドバイスを受ける。他の化粧品は、肌に定着させるものだから、肌トラブルの原因に特定されやすい。しかし、クレンジングは基本的に洗い流すものだから、肌トラブルの原因だと思われにくいのだ。しかし、肌のトラブルの約70%はクレンジングによるものだと聞いた藤田さんは、自分の肌もクレンジングで改善するかもしれないと考えた。
愛用者からの手紙。「私と同じように肌にトラブルを抱えている方に使っていただけるのが一番嬉しい」と藤田さん
もう一つ、クレンジングにした理由がある。
女性の多くは愛用の化粧品ブランドがある。藤田さんも化粧を楽しむ一人として、ブランドを変えるのはハードルが高いと思えた。基礎化粧品やメーキャップ化粧品は種類が豊富で変えにくいが、「愛用している化粧品の良さをいかすために、試しにクレンジングを1本だけ変えてみませんか」というアピールはしやすい。
肌に負担をかけないよう、クレンジング・洗顔・角質ケア・パックの4役を1本でこなすクレンジング『パッククレンジング』と、プロテオグリガンを配合した美容液『レベレンスローション』の2つを完成させ、オンラインショップで販売を開始した。
『モイスチャー パッククレンジング』は、1本で約3カ月使用できる。年齢を重ねた肌はターンオーバーのサイクルが遅い。3カ月たっぷり使って効果を確かめてほしいとの思いからだ。
2016年6月に販売を開始した『モイスチャー パッククレンジング』は、『パッククレンジング』を改良し、2つの機能を追加したものだ。
お客様からの要望、そして藤田さんがしっかりとアイメイクを施すことから、アイメイクまで落とせるよう改良した。さらにマッサージクリームとしても使えるよう、テクスチャーをやわらかくしたのだ。クレンジングをしながらケアとマッサージまで1本で6役、すべてをこなすことができる。また、成分の約92%が弱酸性の保湿成分でできているので、より肌に優しいクレンジングに進化した。
自分の肌に合う最高の一品となるように『パッククレンジング』を開発したが、『モイスチャー パッククレンジング』はそれを凌駕する一品となり、藤田さん自身の自信作となった。
難しいのは開発ではなくプロモーション
藤田さんは、キャリーバッグに商品と企画書を詰め込み、女性誌を扱う出版社やエステショップを回ったり、美容家や著名人に使ってもらった感想をもらえないかと依頼したり、まさに自分の足で稼ぐ、地道なプロモーションを一人で行った。
思いつくことはすべてやってみたが、有名ブランドでもないし、著名人がコラボレーションしているわけでもない。最初は「信用できない」と散々だったという。
「こう言っては何ですが、優秀な監修者がいて、製品の明確なコンセプトがあれば、誰でも化粧品をつくることはできます。それよりも販路を開拓して、使っていただけるようになるまでが難しい。まず、目に留めていただくことのほうが何倍も難しいんです」。
転機になったのは、『パッククレンジング』と『レベレンスローション』の2品で勝負していた2013年、「ショップチャンネル」での取り扱いが決まったことだ。オンラインショップで月に20~30本程度だった販売数が、「ショップチャンネル」で紹介されたことで50倍近くに伸びた。
「ショップチャンネル」の客層の中心となる世代は比較的高めだと言われている。女性特有の体質の変化を経て、肌のトラブルに悩む人が多い世代ともいえる。“自分が苦労したからこそ開発した製品”という開発の背景を理解してもらえるのではと、藤田さんは考えている。
主に化粧品の製造販売を行い、100円ショップ「キャン★ドゥ」や、「ショップチャンネル」などでオリジナル商品を展開している株式会社ドゥ・ベストが、「ショップチャンネル」との仲介役として藤田さんをサポートするという体制が整ったこともあり、着々と販売本数が増えていった。
株式会社ドゥ・ベストのスタッフは、化粧品の開発経験が豊富。「参考になることが多い」と藤田さん。
肌は年齢を重ねても生まれ変わる
コスメ業界に未経験で飛び込んだ藤田さんは、数々の失敗も経験したいという。
例えば化粧品の場合は、発注できる最低ラインのロット数でも何千個単位という世界だ。初期の投資額は予想を超えて高額になり、プロモーション費用まで捻出できなかった。
また、自分の肌を改善したいという一心だった藤田さんは、化粧品の単価相場を気にかける余裕もなかった。“肌のために”を追求した結果、驚くほどの高コストで製造してしまう。結果的にそれが高品質なのに良心的な価格という製品の魅力にはなったが、くじけそうになったことは1度や2度ではない。それでも藤田さんは前向きだ。
「お肌がキレイになって、ポジティブな女性が増えたら嬉しい。今後もそのお手伝いをしていきたい」と藤田さん。
「お肌に自信を持っている女性はイキイキしています。お肌が荒れて私はイキイキと過ごせない時期がありましたが、化粧品によってお肌を生まれ変わらせることができるのだということも経験できました。だから今の状態が一生続くわけではないし、この年齢だからダメだと諦める必要はないということを知っていただきたいです」。
年齢を重ねれば、肌の質も変わっていく。藤田さん自身も未来の自分が愛用できる製品を開発したいと考えている。今後、「DefineBeauty」のラインナップが増えても、「自分が使いたいもの、使って嬉しいものを」という藤田さんの信念は変わることがないだろう。
株式会社ドゥ・ベスト メディア営業部課長の渡部幸恵さん(左)と、平井亜紀美さん(右)。
提供:株式会社Solbino