AIを裏で支える”ゴーストワーカー”の苦悩

ネットサービスの急成長を支え、日々進化する人工知能(AI)。人間の仕事を奪うとの懸念も強いが、実はそのAIを機能させるために驚くほどの手間と労力がかかっている。そんなAIを裏で支えるのが「ゴーストワーカー」だ。(日経09-11)

 

AIは大量のデータから学ぶ機械学習が核。データを与えるだけでなく、物事の判断を教える必要がある。赤ちゃんに「この写真は犬」「この写真は猫」と教えるような作業で、タグ付けやラベリングといわれる。単純だが人間の見識がいる。いわばAIの教師役もゴーストワーカーである。

 

米国では今春、米マイクロソフトの研究者らが「GHOST WORK」と題する本を出版し、話題を呼んだ。この本では様々なゴーストワーカーが紹介されている。

例えば、ウーバーが手がける配車サービス。米国で暮らす客と運転手の間に、実は見えない第三者がいるという。インドに暮らしながら、ネットで運転手を本人か確認し、事前登録した顔と一致すれば、運転手にゴーサインを出す人だ。世界にゴーストワーカーがどのくらいいるかは不明だが、企業と単純労働の働き手を結ぶサイトは各国にある。世界銀行は15年に約580万人が登録していると報告した。

新たな雇用を生むものの、必ずしも処遇がいいとはいえない。低賃金、孤独、スキルアップの機会がない。ゴーストワーカーが挙げる悩みだ。

 

依頼する企業はネットの向こうにスーパーマンがいると勘違いしているのではないか。企業はAIの開発やコストカットを急ぐあまり、見えない働き手に無理を強いていないだろうか。ネットサービスを含め、その質の向上のためにも、開発過程で働き手に十分な配慮がなされているか点検が必要だ。