60歳以上の労働者がいない企業であっても、高齢者雇用の制度は導入しなければならない

なるほど、少子高齢化とはこういうことなのだ。「古希」世代の正社員が職場に増えている。70歳前後の正社員は、総務省の調べによると(今年3月の労働力調査)89万人。75歳以上も加えると103万人になる。

この数字、2007年には69万人だったから10年間で6割増加したことになる。もっとも多いのは建設業の20万人。65歳以上の正社員比率は56%と一番高い。次に製造業の16万人、卸売・小売業の14万人の順になる。とくに建設業や製造業の中小企業は人手不足が深刻で、技能を持つ高齢者を建設現場などで正社員として雇い続けている。

ニッセイ基礎研究所の話では、「65歳を過ぎても正社員として働き続けたい人は潜在的に多く、人手不足に悩む企業は正社員雇用の枠を高齢者に広げている」ということだ。この話を裏付けるのは、正社員に加えて、嘱託、契約、パート、バイトなど非正規社員も含めた「アラ古稀」労働者が実に430万人。この5年間で約170万人増えた。正社員は25%、非正規社員は75%という割合だ。

このように高齢者雇用が一気に広がったのは、例によって団塊世代のせいといえる。この世代が65歳以上になったことで高齢者雇用の数字がはね上がった。その背景には企業が定年延長や廃止で正社員として働き続ける環境を作ったり、短時間勤務を導入したことが大きい。

その動きの根拠になっているのは「高年齢者雇用安定法」だ。高年齢者が年金受給開始年齢までは雇用の安定をめざそうとこの法律がつくられた。5年前に改正され、さらに意欲と能力に応じて働き続けられる環境をめざして強化された。改正で変わったのは、60歳以上の労働者がいない企業であっても、65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講じていなければならないというものだ。