IT、AIで仕事、収入のあり方はどう変わる?  

 

NHK『クローズアップ現代』で「失われる既存の仕事」と題して放映されたレポートが衝撃的だった(9-15)。最初の画面ではIT技術を使った新たなタクシーサービスによって、全米各地で頻発するタクシー会社従業員のデモが紹介された。

 

新しいサービスは車と乗客をスマートホンアプリでつなぐ。乗車する場所、行先が、契約している一般のドライバーにアプリで伝えられる。安い料金、必要な時すぐ見つけられる車、運営会社は料金の一部をドライバーから手数料として受け取る。このコスト競争力でタクシー運転手の収入は半減し、サンフランシスコでは最大手のタクシー会社が破産した。

同じような仕組みは宅配業界にも出現した。ここでも配達するのは自家用車を持ち込む一般のドライバー。オフィスには12人の正社員。アプリを使うことで配車係も、経理も、従業員の管理も必要ない。

 

これが急成長するオンデマンドエコノミーだ。使いやすいソフトで効率的なシステムを築ければ誰でも商売が始められる。オンデマンドエコノミーで収入を得たことのある人は全米で4500万人を数えた。専門家は「モノやサービスが飽和状態になっていく中で生産性だけが上がっていく。その分人手が余る。だが、新たに生まれてくる雇用は少なく、不安定だ」という。実際、2年前に失業し、正社員の仕事をさがしている34歳の女性は「時給16ドルの買い物代行サービスの仕事が生活の支え。でも数時間の仕事しか見つからない日も少なくない」と語る。

 

オンデマンド経済が示すように、これからの産業は生産性が上がっていっても全体の豊かさを保証しない。そこから格差を生み、低賃金を増やしていくかもしれないという危うさがある。番組は、将来の仕事は収入よりも働くことへのモチベーションを意味することになるのではないかと暗示して終わる。(岩崎)