自由な働き方が進めば闘争心は薄れていくのか  

 

「働き方改革」が進むと、オフィスと外の世界の垣根が低くなる。垣根が低くなって社員がサテライトオフィスや在宅勤務など、会社を離れて仕事をするようになるとどんなことが起こるのか。「営業、薄れる闘争心」と興味深いタイトルのレポートを見かけた。(日経産業新聞1-19)

 

都内にあるIT系のベンチャー企業では、地方の山あいの町にサテライトオフィスを設けた。都内のオフィスに窮屈さを感じていた営業担当の社員が希望を出して家を引き払って移り住んだ。同社の営業は顧客回りのないオンライン営業で、一日中、画面の向こうの人とやりとりする。朝9時に始業し、夕方6時に東京の上司に電話で仕事の進捗を報告して一日を終わる。だが、4か月で「東京に戻ってこい」と本社から辞令が出た。「営業は周りと切磋琢磨して案件をとる闘争心が不可欠」というのが人事制度を担当する部門の判断だった。本人ものどかな環境で「資料作りは明日でもいいか」と、仕事を先送りするようなところがあったので納得できた。気づかぬうちに仕事への意識が上司とずれてしまったようだ。

別の会社でもテレワークで働く社員が増えた。人材確保では人気が出たが、しだいに弊害が出てきた。会議を開こうとしてもメンバーが集まりにくくなった。自由な働き方は会社の魅力づくりに役立ったが、4年前に毎日出社する方針に変えた。

 

同じ建物の中でも、自分の席を固定しない「フリーアドレス」への転換が急速に進んでいる。自由な働き方への象徴的な制度だが、自分の部下が目の届かないところにいってしまう管理職の戸惑いがささやかれている。「働き方改革」の先端部分は、まだこれといった教科書がないのかもしれない。