管理職や中核人材が職場を離れていく。経営層が危機感を強める介護離職

 安倍政権の3本の矢も少し色あせてきた感があるが、新たに打ち出した「新・3本の矢」は①強い経済、②子育て支援、③社会保障をあげた。そこで社会保障で提起されているのが「仕事と介護が両立できる社会づくり」というもの。なにしろ介護の負担で職場を離れる「介護離職(退職)」が直近1年間だけで10万人を超えるという由々しき事態。労働力の観点からも問題視せざるをえない。

 介護離職の多くはいうまでもなく女性なのだが、いや、「男性も介護離職」という見出しで取り上げたのが日本経済新聞だ。とくに男性の離職に危機感を強めているのが経営層だと本紙らしい視点の記事である。いまや経営トップが管理職やベテラン社員といった中核人材の離職に悩むようになった時代なのだ。介護は女性だけの問題ではないという認識が広まり、安倍首相も「介護離職ゼロ」を成長戦略に位置づけるに至った。

 社会の高齢化に対応して介護保険制度がスタートしたのは15年ほど前のことだが、時をへて、その意味合いは介護される高齢者というより、高齢者を抱える家族の負担を軽減するほうが緊急となってきた。ここは男女の別なく介護が原因で職場を離れる人が一人でも少なくなるよう介護施設の整備や介護人材の育成、在宅介護の負担軽減など、官民一丸となって取り組むべき段階だろう。記事では男性介護者支援者の全国ネットワークや仕事と介護の両立支援に対する労使の取り組みも取り上げている。