女性社員の転勤。女性活躍の時代の位置づけ

東京海上の「ワイド型」と聞くと、新しい保険商品の話かと思ってしまうが、実は同社が12年ぶりに行なった人事制度改定の結果生まれた新制度の一つだ。大幅な見直しで生まれたワイド型の1年後の様子を『日経Woman』欄が取り上げている(3-27)。

 

東京海上には新卒採用で「グローバルコース」(全国型=転勤がある)と、「エリアコース」(地域型=転勤がない)の2種があった。前者は主に男性、後者は主に女性が選択する。1年前、女性社員の活躍の選択肢を広げてもらおうと、転勤のある「ワイド型」が追加された。8000人にのぼる人材の働く地域を限定し続けることが多様な働き方をおさえ、成長の機会を奪っているのではないかという、もっともな指摘があったからだ。

これによって丸の内の本店で大企業向けに保険を売っていた佐藤さん(26歳)のように、地方の支社に転勤するような人が現れた。佐藤さんは「前の部署では企業同士の長い付き合いで契約を更新してくれた顧客が多く、自分の提案で営業しているという実感がなかった」という。それが支社では個人顧客向けに2、30社の代理店とやりとりする毎日だ。「自分の言葉で提案している」という、入社時には想定もしなかった、まるで違う働き方だ。

ワイド型を導入して1年。成果を判断するにはまだ早いと、人事では佐藤さんのような実例がもっと増えることで反響をたしかめたいと考えている。

従業員300人以上の企業に勤める女性社員のおよそ6割は転勤を望んでいないという(法政大学・武石恵美子教授の調査)。夫も転勤の可能性がある既婚女性では70%、夫に転勤の可能性がない既婚女性は65%で、結婚していない女性は46%だ。男性の場合は全体で42%という。共働きが当たり前になっている昨今、転勤をめぐる議論はまだまだ続くだろう。