大震災から8年、遅れる事業継続計画

東日本大震災から11日で8年。大企業は災害を想定した事業継続計画(BCP)を策定してきたが、帝国データバンクの調査によると策定済みの企業は15%にとどまる。中小企業を対象にした別の調査では74%が策定していない。(日経03-12)喉元過ぎれば熱さを忘れるにならないよう備えが大切だが、策定出来ないのは理由がある。

 

 

 

18年7月、西日本豪雨の影響で自社の倉庫の一部が被災した愛媛県の中小酒造会社のある役員(48)は「うちの会社の規模ではBCPを策定できる人も時間もない」と嘆く。自ら被災して初めて重要性を認識した。しかし大企業のように専門の知識やノウハウがないという。 自社も取引先でもBCPを策定しておらず、建屋が半壊になった取引先企業もあり、出荷再開まで3カ月以上かかった。

 

18年9月に最大震度6弱を観測した北海道では、苫小牧市に工場を置くトヨタ自動車北海道が災害発生後に速やかに避難や復旧ができるようにBCPを見直す。一方で、中小企業の策定は遅れている。北広島市で自動車や電子機器向けに部品を製造する企業は「工場を自前で稼働させるほど大量の発電機は買えないし、置く場所もない。停電時は操業を諦めるしかない」と語る。
また北海道地震では大規模停電が発生した。大手乳業メーカーの工場が相次ぎ稼働を停止。工場が止まれば酪農家が生産した生乳を受け入れることもできない。工場への自家発電機の導入を検討中だが、まだ計画は定まらない。万一の備えは生産から消費者に届くまで仕組みが整っていなければ効果が得られない可能性があるという。中小まで対策が進まないとサプライチェーンに影響が出る。

 

帝国データバンクの調査(18年5月実施、全国2万以上の会社のうち1万1社から回答)によると、「BCPを策定していない」との回答が46%に達した。理由は「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が44%、「策定する人材を確保できない」が31%だった。

 

未策定で目立つのが中小企業だ。約2300社の中小企業が所属する東京中小企業家同友会が、18年10月にまとめたBCP策定状況によると、「策定していない」と答えた企業が74%あった。策定済み企業の内容をみても従業員規模が比較的多い中小企業が中心で、「大手との付き合いで策定しているところがほとんど」(同友会)という。管理業務に人員を回せず、社長が兼務するような中小企業はBCP策定手法がなく自力で策定できない実態が浮き彫りになった。

BCP対策の知見を持つ人材が足りない中小企業へノウハウを提供し、策定するのは国か大企業か。いつ来るかわからない災害への不安を胸に今年も3月11日を鎮魂の思いで迎えた