働き方改革の現場の担い手は誰か

労働基準法制定以来70年ぶりの大改革だとして、「働き方改革」の法案成立が大詰めだが、大企業はともかく中小企業の現場の取組みぶりはどうなのか。読売新聞(5-19)が神奈川県内の中小企業2600社の「働き方改革」の進捗ぶりを調査した。

調査は昨年11~12月に行なわれた。まず働き方改革に、「取り組んでいる」企業が36%、「取り組んでいない」企業は63%にのぼった。取り組んでいない企業では従業員規模の違いが大きく、従業員20人規模では50%に対して、5人以下では74%という割合だった。取り組んでいない理由は「人員に余裕がない」が41%ともっとも多く、「必要性を感じない」が39%と続いた。人手不足を理由にあげた企業の割合がもっとも高かったのは飲食サービス業で70%にのぼった。働き方改革が進まない原因は人員を割けないからであり、その原因は人手不足にあるという、原因と結果が歴然としているのだ。しかも、こうした企業では働き方改革に必要な人材確保が「できてない」(47%)のが現実だ。数もさることながら、「求める質の人材がいない」を人材確保の課題としている企業がIT、建設、医療・福祉をはじめとして53%にのぼっている。今後の働き方改革の推進には暗雲が漂う調査結果となった。

働き方改革法案では、もっぱら「高度プロフェッショナル(高プロ)制度」など、高度人材に関する議論が報道されることが多いが、実際の働き方改革推進の担い手となる大多数の人材事情がかくも悲観的な状況であることは意外に知られていないように思える。