人手不足は働き方を一気に変える

人手不足は進化のチャンスでもある。労働需給はひっ迫し、有効求人倍率はバブル期並みの水準に高まっている。企業が人手不足の時代を生き抜くため職場そのものを変え始めた例を日本経済新聞(5-2)が紹介している。

コールセンターを運営する東京のK社は若手女性スタッフの確保に四苦八苦してきた。数年前に1人1万円だった採用コストは近年5万~10万円。保育所不足で子育て世代の応募が少ないのだ。いっそ主婦が暮らしている町に職場をつくろう。昨年秋、埼玉県に事業所を設けた。スーパーの1階、無料の託児所も併設する「ニア宅オフィス」だ。瞬く間に50~60人が応募してきた。同社は「離職者を減らせれば研修費は不要。通勤費も減り、採算は合う」と語る。

2050年には日本の生産年齢人口が3割も減る。働く意欲があるなら老若男女働いてもらわないと日本は停滞してしまう。派遣のS社は60代を中心にシニアを企業に送り込んでいる。登録者は3000人を数える。フルタイムの若者より働く日数は少ないが、企業の人件費を抑え、業務効率を高める効果がある。良質な人材が来ないと悩む企業のニーズをとらえている。

働く人の国籍は多様でいいと、技術者派遣のT社は外国人技術者を年間100人以上のペースで増やしていこうとしている。人材ソースは留学生にも及ぶ。ベトナム人の一人は「友人の留学生の9割が日本での就職を選んだ」と語る。働く人が足りないなら働き方を変えればよい、というのがこれからの合言葉になりそうだ。