トヨタも、ホンダも。配偶者手当が絶滅への道

女性労働力300万人。これは日本の、20~60歳以下の未就労の女性の総数。つまり人口減少で外国人を入れようか入れまいかと論争する国の、実は隠された労働力だ。この人たちがなぜ仕事に就かなかったかといえば、妻が家庭を支え、夫が残業にまみれ仕事に専念するという伝統的な高度成長体制のたまものだからだ。専業主婦を務める妻には手厚い保護策を施した結果、会社の配偶者手当や、103万円の壁や、配偶者特別控除などの制度が残った。

 

いまや旧弊に属する制度の数々にメスを入れる時期が来たと、日本経済新聞(3月5日)が伝えている。もっとも現実感があるのは企業が支給する配偶者手当だ。この制度の歴史は古く、戦前は法律でも義務付けていたという。今日では企業の7割が実施しているが、昨年、天下のトヨタとホンダが廃止を発表してにわかに動きが出てきた。ホンダは月1万6000円の配偶者手当をなくして子どもへの手当を4800円から2万円に引き上げた。トヨタは月1万9500円の配偶者手当の廃止と引き換えに子ども手当を2万円にした。こうした動きの背景には配偶者手当そのものが時代の変化にそぐわなくなったこともあるが、一方で独身社員から、同じ仕事をして給料が違うのは不公平という不満が高まってきたためだ。

 

よく知られているように、パートで働く既婚女性の多くは年収を増やさないよう働く時間を調整する。一定額を超えると配偶者手当がもらえなくなる、103万円を超えると所得税を払わなくてはならない、配偶者特別控除が少なるという、もっともな理由からだ。しかし考えてみると、これらことごとくが実は女性の活躍の足を引っ張ってきたのではないかと、みんなが気付いてきたのだ。