かつては残業まみれの会社が「人を活かす」ランキング1位に輝いた理由

日本経済新聞が毎年発表する「人を活かす会社ランキング」。この調査は、「雇用・キャリア」「ダイバーシティ(人材の多様性)」「育児・介護」「職場環境・コミュニケーション」の4つの観点から採点するもので、今年1位に選ばれたのは2年連続でソフト開発大手のSCSKだった。同社はCSKを吸収合併して現社名とした住友グループのシステムインテグレーターだ。

 

このほか上位にはTOTO、富士フィルム、セブン&アイ、イオンといった顔ぶれが並んだ。女性や外国人、障害者など多様な人材を有し、育児や介護と仕事が両立できる制度があり、社員本位の職場をつくりあげた企業の代表選手ということだ。トップのSCSKはこの業界では珍しくない残業まみれの会社だった。2009年に社長に就任した中井戸信英 ・現会長はあるメディアのインタビューで、「経営者としてやってきたら、机の上で寝ている社員がいた。これには仰天した」というエピソードを語っている。そういうわけで今でこそ健康経営、働き方改革を旗印にする同社の改革の出発点は残業撲滅だった。現在、残業は月平均18時間。いまや時間通りに帰宅する優等生だ。

 

夜中までの飲酒も、家庭の不和も、メンタルの問題も、どれも残業が影響していると中井戸会長は言う。つまり労働環境の基本は残業のない会社生活にあるということだ。こうした企業ランキングは数えきれないほどあるが、トップクラスでランクされた企業のその成果がどんなところからもたらされたのか、そこに注目してみるのも大いに勉強になる(10-13 岩崎)