「逆参勤交代」で働き方改革と地方創生を狙う

江戸時代の参勤交代とは逆に、大都市の社員が地方で交代で働く「逆参勤交代」の取り組みが始まった。サラリーマンの期間限定・交代制の働き方を試みる。都市と地方を行き来する発想は何を狙いとするのだろうか。(9-18 日本工業新聞、11-16 NHK 『おはよう日本』)

 

江戸時代の参勤交代とは逆に、大都市の企業社員が期間限定・交代という条件で地方で働く「逆参勤交代」構想が浮上してきた。以前から養老孟司氏(作家・解剖学者)などが提唱していたものだが、これに三菱総研が理論付けを行ない、モデル事業を開始する。事業がスタートするのは2018年度以降になる。言ってみれば、働き方改革と地方創生を同時に進めようというのが狙いだ。

江戸時代の参勤交代は1635年に制度化され、これが幕末まで長く続いたことで多くの人が定期的に移動し、その間に藩邸や宿場町、街道が整備された。逆参勤交代も同様に地方でオフィスや住宅、ITインフラ需要、移動交通、生活にかかる消費などを創造する効果を期待する。都市から地方に移動する社員は、週に数日は会社の仕事、数日は地域のために働く。得意分野を生かして特産品の販路開拓や観光客の誘致、地元の生徒の教育などに携われば、地方の担い手不足の解消に貢献できる。

 

企業や社員のメリットは大きい。プロジェクトチームの集中合宿、将来の経営幹部のトレーニング、社員のリフレッシュなどに活用できるだろう。社員の意欲向上や健康増進、生産性や業績向上が見込める。地方で有望なニッチトップ企業やベンチャー企業を発掘し、地元の企業や大学との新事業創出も期待できる。もちろん課題もある。経営トップの理解や費用対効果の検証などだ。モデル事業の結果に注目したい。