「女性活躍」を指揮する経営者の陰に”体験”あり?

「女性活躍」の取り組みは企業ごとに濃淡があると、日本経済新聞の「With」欄が興味深いレポートをしている。とくに目を引くのはその原因分析だ。個人的な体験がもとで経営者が女性の活用や登用に熱心になり、その号令一下で会社が動き出したというのだ。

明治安田生命の根岸秋男社長(57)はまだ30代の頃、優秀な女性部下との出会いがきっかけになった。不慣れな新任営業所長を支えてくれた女性の優秀さを目の当たりにして彼女たちの活躍の場を広げるべきだと痛感した。社長に就任してから10%に満たなかった女性管理職比率を2017年4月までに20%に引き上げようという目標を掲げている。千葉銀行の佐久間英利頭取(63)の原動力は長年の共働き経験だ。妻は中学教師。3人の子供を育てる妻を家事育児の分担で助けてきた。職場環境さえ整えば女性も対等に活躍できると確信する。同社は2014年度の「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。女性活躍でなにかと成功例にあげられるSCSKの中井戸信英会長(68)がたじろいだのは孫を産んだ娘が産後8ヵ月で職場復帰すると言ったときだ。そんなに家計が苦しいのかと誤解して喧嘩になった。それほど仕事に情熱を持っていたのかと、会社の女性活躍施策を進めるきっかけになった。同社は日経の「人を活かす会社ランキング」で1位に輝いた(本欄10月13日でも紹介)。

いずれも社長室に閉じこもっていては得られない体験が号令一下につながった。机上の政策や理屈では動かないことも、なにかのきっかけで本気になれば一気に動き出すということだろう。改革を指揮する経営者の陰に「体験あり」だ(11-4 岩崎)。