「期間限定商品」のタイムリーな開発、投入で
「森永アロエヨーグルト」の
ブランド価値を高める

森永乳業株式会社

森永乳業の「森永アロエヨーグルト」は、1994年12月の誕生以来、累計で59億個を販売してきた(2018年2月現在)人気商品です。発売当時、アロエを加えたヨーグルトは市場では珍しく、爽やかな味わいとアロエの独特の食感でお客様の注目を集めました。2個が1パックになった「森永アロエヨーグルト2連」は、フルーツヨーグルトの市場で今でも単品売上ナンバーワンを誇っています。
しかし、長年愛されるブランドを守り続けるのは容易ではありません。お客様に飽きを感じさせないための様々な工夫や話題づくりが欠かせないからです。定番商品と合わせて発売される期間限定商品もそのプロモーションの一つ。3か月という期間だけ売場に並び季節感を演出しながらロングセラー商品をアピールします。堀籠美也子さん(食品総合研究所第2開発部)の仕事は期間限定商品の開発。そして、堀籠さんとチームを組んでいるのが片岡由依さん。「森永アロエヨーグルト」のブランドマネージャーとして市場拡大に奮闘しています。そんなお二人に話を聞いてみました。

堀籠さんの手掛けた、期間限定商品「森永アロエヨーグルト ダブルキウイ」(左)は、異なる2品種のキウイをミックスしたもの。味も見た目もカラフルで新鮮な色味の商品に仕上がった。2018年2月中旬~5月中旬の3ヵ月間のみ、定番の「森永アロエヨーグルト」(右)と一緒に販売される。手前のスプーンは堀籠さんがいつも持ち歩いている試食用の特製スプーン。

 

期間限定商品の開発を担う研究員の堀籠さん

堀籠さんが勤務する神奈川県座間市の研究・情報センターには、森永乳業の研究開発拠点が集約されており、お客様向けの商品開発や基礎研究、様々な検査などが行われる場所だ。森永乳業のほとんどの商品はここを通じて生まれる。
白衣を着た研究員が行き来すこの建物内で、今回のヒット商品「森永アロエヨーグルト」の期間限定商品開発者として取材を受けていただいたのが堀籠さん。そして、ブランドマネージャーの片岡さんだった。
堀籠さんの在籍する開発部は、商品を誕生させるための部署だ。本社のブランドマネージャーやマーケティングの担当者と商品のコンセプトをすり合わせ、使用する原料や製造方法など考慮しながら、試作を繰り返して製品化を進めていく。
その部署で堀籠さんには、「森永アロエヨーグルト」の販売をさらに飛躍させる、大きな役割が与えられている。それが、3か月に1商品のタイミングで発売される期間限定商品の開発なのだった。
お客様のちょっと違う味を求める心理や、店頭に並んだ時の印象変化や話題性など、期間限定商品は既存商品との相乗効果を狙う「森永アロエヨーグルト」を支える市場戦略なのだ。

堀籠さんは、日常生活を潤す食品が作りたいという熱い思いを抱いて入社し、最初の3年は工場で品質管理部の仕事を経験。商品が正しく作られているのかを厳しく検査している部署で学んだことが今の仕事にも活かされているという、入社7年目の女性の商品開発者。2015年9月から 「森永アロエヨーグルト」 期間限定商品の開発を担当している。

 

ヨーグルトとアロエのコンビは、健康的な新商品を模索し登場

1994年「森永アロエヨーグルト」が発売された当時、まだ子どもだったという堀籠さんは、商品を食べる側だった。好きだったヨーグルトをまさか自分で作ることになるとは思ってもいなかったと笑いながら、引継ぎや研修で学んだ「森永アロエヨーグルト」誕生のエピソードを教えてくれた。

「森永乳業では、健康的なイメージを持つ新しい商品を模索していました。当時ブームだったナタデココに次ぐ素材として挙がったのがアロエだったんです。日本でアロエといえば、薬などに服用される『キダチアロエ』という品種で『苦い』、『飲みにくい』といったイメージが強かったようです。でも、このヨーグルトに使っているのは『アロエベラ』で、苦みのないプルッとした食感が特徴。先入観を覆すおいしさで、消費者に受け入れられたのです。もちろん、そこに至るまでには、アロエとヨーグルトを合わせただけの単純な味にならないようにする、フレーバー開発チームの努力がありました。ベースのヨーグルトには発酵臭が控えめな乳酸菌を選択し、さわやかな南国フルーツ味でアロエのイメージを表現しています。そのため、お客様の中にはアロエはこの風味だと思っている人も多いかもしれませんね」。

「他にも開発には、トロリとしたヨーグルトの中で、アロエの葉肉が容器の底に溜まらないようするためのこだわりもありました。食べる側の食感を意識して適度に均一に混ざることも、ヨーグルトとアロエの一体感を実現する重要なポイントです。森永乳業では、大粒の果実を柔らかいヨーグルトと混ぜ合わせるノウハウを当時すでに持っており、これを応用してヨーグルトにアロエが均一に混ざる技術につなげました」(堀籠さん)。
  
こうして、「アロエの独特の食感」と「さわやかなフルーツヨーグルトの味わい」、このどちらが欠けても成り立たない、新しいフルーツヨーグルトが1994年に日本で誕生。「森永アロエヨーグルト」として長年愛される森永乳業のブランドに成長し、今では海外にも進出している。

20~30代をターゲットに「カラダの変化が気になる人にアロエの機能性とおいしさを提供する」というコンセプトで展開する「森永アロエヨーグルト」のラインアップは6商品(①森永アロエヨーグルト/②森永アロエヨーグルト2連/③森永アロエヨーグルト 脂肪0(ゼロ)/④森永アロエヨーグルト ハンディスタイル/⑤森永大粒アロエ&ヨーグルト⑥森永アロエヨーグルト ダブルキウイ)ある。森永乳業には他にもロングセラーヨーグルト「ヒビダスヨーグルト」があるが、こちらはファミリーをターゲットにし、商品の差別化を図っている。

 

ブランドマネージャーとの信頼関係が市場のヒットにつながる

新しい味として生まれた「森永アロエヨーグルト」だが、20年以上経つ間に味やパッケージの改良を繰りかえし、現在は16代目で「カラダにアロエのチカラ」をキャッチコピーに販売されている。その商品プロジェクトの旗振り役がブランドマネージャーの片岡さんで、東京都田町にある本社と研究所を頻繁に行き来し、堀籠さんに市場のニーズを伝えながら、商品開発の道筋をつけていく。
もちろん「森永アロエヨーグルト」全体のブランド戦略に関わっているが、この期間限定商品は発売サイクルが早く注目度も高いことから、味やパッケージについて堀籠さんと積極的に意見交換を行っているのだった。

入社10年目の片岡さんは、工場の管理部門からヨーグルトのマーケティング部門に配属となり、2017年3月から「森永アロエヨーグルト」ブランドマネージャーに。

 
「彼女の作った商品でヒットした最近の期間限定商品は、2017年8月発売の『森永アロエヨーグルト 芳醇ぶどう』ですね。データで見ても、ここ数年の中で特にお客様に支持された商品です。どのフルーツと合わせるかという堀籠さんへの最初の提案は私のほうからで、感覚だけではなくデータやアンケートといった具体的な資料を見てもらいます。『森永アロエヨーグルト』のような人気商品の販売数量をまかなえるような果物は、実はあまり多くはありません。同じようなフレーバーのローテーションになってしまいがちなのですが、彼女は前に使った果物でも、さらにおいしい商品を目指すんです。だから、試作品が出てきた時に、裏切られたことがありません」と、1年間堀籠さんと仕事を共にする片岡さんは信頼を寄せる。

「森永アロエヨーグルト 芳醇ぶどう」。ぶどうをすり潰して半液体状にした「ピューレ」を使うことで、おいしそうなぶどう色のヨーグルトに仕上がった。これに、「芳醇」というネーミングを裏切らない旬の味がマッチし、季節感を味わえる特別なものを食べたいというお客様のニーズを掴み、ここ数年の中でも人気が特に高かった。

 

商品名などに使う表現には、根拠が必要な食品業界

食品に使われる商品名やキャッチコピーでの表記には制限があり、ひびきのよい言葉でも慎重に扱わなければならない。法律的に言えるか? お客様から問い合わせがあった時その根拠が答えられるか? が問われるからだ。ヒットした「芳醇ぶどう」にしても、どうして『芳醇』なのか、その裏付けが必要だった。

「『芳醇』の場合、果汁感を表現した言葉といっても抽象的で説得力がありません。ですので『芳醇ぶどう』では『芳醇さ』を表現する為に、ぶどうをすり潰して半液体状にした『ピューレ』を配合しました。通常の期間限定商品ではフルーツ果汁のみの処方になる場合が多く、このぶどうの風味が味わえる『ピューレ』が『芳醇さ』のポイントになります。また、『完熟』という言葉も以前商品名に使用したことがありますが、この場合は『搾汁時の果汁糖度が何度以上のもののみを使用』と数値化しました。商品名やキャッチコピーの表現に基準を設けることも私の仕事です」と堀籠さん。

また片岡さんは、「商品名のインパクトは売上に与える影響も大きいため、商品の特性が感覚的に伝わるような名前をつけたいのですが、それが使えるかはデータで根拠が示されるまで分かりません。無邪気に私が、こんなコンセプトで新しい商品名にこの言葉が使えますか?って堀籠さんに投げても、例えば、『旬摘み』は、何月の旬の時期に摘んだ果実を搾汁という具合に、実証してもらわないといけないのです」という。そうやって出来上がった商品のひとつが、ブルーベリー、ストロベリー、アロニアの3種のベリー果汁を使用した「森永アロエヨーグルト 旬摘みベリー」。2017年11月に発売された。

堀籠さんは、そんな片岡さんの「ひらめき」に、応えることにもやりがいを感じているそうだ。魅力的だが曖昧、そんな言葉に対する基準作りに苦労しながらも、メーカーとしてきちんとお客様が納得できるようにすることを重視する。
「ただ、明確な根拠を示すことでお客様に納得感を持ってもらうことも大切ですが、実際口にした味覚が次の購買につながります。だから風味も疎かにできません。前回ヒットした『芳醇ぶどう』は、この2つがベストマッチした商品だったと思います」と自分の仕事にこだわりを持つ堀籠さんに、片岡さんは女性が頑張っているというよりも、プロとしての取り組み姿勢を評価している。

今まで発売された期間限定商品には、こんなフレーバーも。①2009年 3月発売「森永アロエ&ヨーグルト ゆず」②2014年11月発売「森永アロエヨーグルト+(プラス)な素材 グァバ&マンゴー」③2014年12月発売「森永アロエヨーグルト シャンパンカクテルテイスト(発売20周年記念プレミアム商品)」

 

ヒット商品であり続けるために必要な開発者の地道な努力

人気ある商品を売り続けることは、人気商品を生み出すことよりもある意味難しいかもしれない。「森永アロエヨーグルト」が置かれている環境も発売当時とは大きく変化している。消費者の動向を検証しながら、細かいリニューアルを行っていかければならないし、コスト意識も大事だ。そして、商品の品質というブランドの要は絶対的だ。
ヒット商品であり続けるためには、華々しさよりも地道な研究という実践が開発の現場には託される。研究者は、そのための努力を惜しまず、商品に向き合っている。
堀籠さんもそうだ。「自分が作った商品が発売された後は、店の売り場を必ず見るようにしています。スーパーで手に取っている人を見ると『ありがとうございます!』って思いますよ」と心で小さくガッツポーズ。お客様の目線を確かめるため現場へ足を運ぶことも怠らない。
現在発売中の、「森永アロエヨーグルト ダブルキウイ」 は、種類の違う2つのキウイをコラボしたひねり技。定番の味を損なわず、見栄えもグリーンとゴールドのキウイがカラフルでデザートのワクワク感が伝わる狙い通りの商品になった。だが3か月後、次の商品が出れば市場から姿を消す。「寂しくないですか?」というこちらの質問に「もっといいものを、次に作りますから、寂しくなんかないですよ」と堀籠さんは即答した。

定番商品のイメージを守りつつ、新しい味に挑戦し続ける「森永アロエヨーグルト」だが、お客様から新しい商品やキャッチコピーの根拠を尋ねる問い合わせは意外と多いそう。これから発売される商品名も、「適当には言えないのでまだ秘密」とコンセプトとネーミングを固めることに苦労している様だ。

女性だからではなく、自分だからできる商品作りを目指す

「森永乳業は、女性だからといって仕事の領域が制限されることはありません。だからといって男性と比較されるわけではなく、自分のやる気次第なんです。本当にそれぞれ個人の能力が評価される社風です。ですから、人事異動などジョブローテーションにも男女の差を感じることはないですね。いろんな部署や人とのつながりから、新しい発想が生まれ働く意欲が高まります」と堀籠さんは教えてくれた。
研究・情報センターには、多くの研究員が所属し、男女比のバランスもよい。社内全体の風通しのよさが、商品のクオリティに影響していることは間違いない。
その環境で、堀籠さんは「おいしさ」や「健康機能性」といった森永乳業ならではの価値を持った商品作りを、女性だからできるというよりも、自分だからできることを念頭において挑んでいる。
そんな堀籠さんのプライドがこれからも「森永アロエヨーグルト」を売れる商品へと導いていくのだろう。

 
 
提供:森永乳業株式会社 https://www.morinagamilk.co.jp/
「森永アロエヨーグルト」ブランドサイト http://www.aloe.ne.jp/

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