携帯にすぐれ、女性も嬉しい小さなホッチキス
数々の賞を受け、当初予測の2倍以上を売上げる

マックス株式会社はご存じ「MAX」のロゴがついたホッチキスをはじめとする文房具や工具を製造・販売するメーカーで、近年は浴室暖房・換気・乾燥機やディスポーザなどの住環境機器や車椅子の製造なども手がけています。
ここ数年、就業形態やオフィス環境において目覚ましい変化が見られる中、開発されたのが「colorgimic(カラーギミック)」です。「小ちゃくてキュート」をコンセプトにしたこのホッチキスは、携帯することを想定して作られた商品で、持ち運ぶ途中で勝手に開いたりすることがないよう、心地よくロックがかけられる仕組みになっています。今回はこのカラーギミックを開発したマックス株式会社の商品企画部門に所属する平井あゆみさんと越前光さんの二人にお話を伺いました。

ホッチキスを70年以上作って来た会社として、
女性の活躍を応援できる商品を

2011年のリーマンショックの後、日本にも不況の波が迫り、各企業において経費削減の動きが見られた。限られた予算の中で、文房具や事務用品などを含む消耗品の支出は最初に切り詰められる部分だ。欲しい文具があれば、自分の財布からお金を出して買う人が増えた。

また、2012年以降の第二次安倍政権下で積極的な女性活躍推進政策が採られたことにより、オフィスでもいきいきと働く女性の姿が増え、同時に多様な働き方を後押しする企業が出てきた。フリーアドレスのオフィスが増え、テレワークを積極的に取り入れられたことにより、それまでは机の上に置かれていたペン立てはペンケースに代わり、バックの中にしまわれて、携帯されることが多くなった。

そのような潮流の中で、カラーギミックは2014年ごろから開発された。この頃にマックスに中途入社をした平井あゆみさんが、このプロジェクトを担当することになる。平井さんに与えられたミッションは、携帯性とデザインを重視し、女性に受け入れられる商品を作ることだった。

今回のヒット商品としてお話を聞く「colorgimic(カラーギミック)」。サイズは約2cm×6.7cmで、既存のホッチキスと比べると圧倒的に小さい。


「ホッチキスを70年以上作ってきた会社として、道具としての品質や機能性、マックスブランドのこれまで培ってきた信頼感は維持しつつ、小さく携帯性に優れていて、見た目にも女性にも受け入れられやすい形状・デザインが求められていました。
どんなに小さくなっても、書類などの大事なものを綴じるという目的に変わりはありません。快適に紙を綴じる機能はそのままに、携帯するのに便利、オシャレで持っていたくなるという新しい価値を両立させることが使命でした」(平井さん)

 

お話を聞かせてくれたマックスの商品企画・マーケティンググループの平井あゆみさん。1歳の子どもがいるママで、現在は時短勤務中。


カラーギミックの開発は、平井さんに加え、2014年に新卒入社した越前さんの2人が商品開発担当。女性デザイナーと技術や品質の担当者が加わり、7人のチームで構成された。
 
「当社はメーカーなので、企画から生産まで社内で一貫して商品作りを追求できることが強みです。私たち商品企画の担当者がすべての工程を見つつ、各工程で専門部署のプロの知見をシェアしてもらいながら開発を進めていきました」(越前さん)

 

社内の打ち合わせの様子。各部門のプロたちが、お互いの知見を集結させて1つの商品を作り上げていく。

「作っては試す」を人の手で繰り返し、
2年の歳月をかけて商品化を実現

それでは、実際の商品開発はどのような現場だったのだろうか。
「通常、ホッチキスは丈夫さや寸法調整を考慮して、金属製の部品を中心に作ります。今回の商品は軽やかな仕上がりにしたかったので、できる限りプラスチックを使いたかったのですが、強度は圧倒的に金属の方が勝ります。持ち運びをするというシーンを考えれば、落下や他の物との接触が多くなるので強度が必要です。軽やかな仕上がりで強度を保つため、プラスチックと金属製の部品のバランスをどう取るか、ということが設計の肝になりました。

カラーギミックは綴じる時の押しやすさを配慮してデザインされている。


加えて、プラスチックと金属製の部品の組み合わせにも難しい問題がありました。金属の方が固いため、どうしてもプラスチックが変形したり、破損したり、ということが起こります。だからといってプラスチックの強度を増すと、今度は本来プラスチックのしなりを必要とする部分が硬くなり、割れて破損してしまいます。1つのポイントを修正すれば、今度は別のポイントがダメになるという状況で、何度も作っては試す、の繰り返しでした」(平井さん)
 
「私が他部署から異動してきたばかりのときに、平井さんが青い顔をして『これ、どう思う……?』と聞いてきたのを今でも覚えています。この商品は丸いボタンをスライドすることで、使用状態と収納状態の切り替えができ、“ドライバ”“マガジン”と呼ばれる部品がそれぞれ定位置に移動しますが、ホッチキスとして使用するにはホッチキス針を入れる“マガジン”を持ち上げる必要があります。この重要な役割を果たしているのがプラスチックでできた幅2mmほどのごく小さな爪になるのですが、爪を薄く細くすると強度が十分でなく、折れます。逆に爪を太くすると、今度はプラスチックがたわまなくなって折れてしまいます。毎日『折れました』という報告が上がるたびに心も折れそうになる、そんな状況でした」(越前さん)

 

平井さんとともに話を聞かせてくれた越前光さん。ちょうどカラーギミックの開発が始まった2014年にマックスに新卒入社した。


マックスでは平井さんや越前さんをはじめ、社員が実際に試作品を手にして紙を綴じるテストを行って強度を確かめる。
「よくCMで商品の機能試験を機械でやっている映像などを目にしますが、私たちの会社では人が実際に使ってテストをします。機械で試験すると、力の加わり方などが一定なので試験結果は良くなります。ところが、実際に人が使うと、機械のように真上から均等にホッチキスに力をかけられることはあまりありません。少し横にそれて斜めから力が加わったり、その時々によって手が当たる位置が変わったりするので、当然、商品には機械で試す以上の負荷がかかります。人が日常的に使うことに耐えうる商品にしていくためには、あらゆる状況を想定してやっぱり人が使って検査をしていくしかないのです」(平井さん)

「かわいい!」と多くの女性の支持を受け、
売上予測の2倍以上を記録するヒット商品に

商品の開発には実に2年の歳月を要した。様々な苦労を経て2016年に販売となったカラーギミックは、これまでマックスにはない新しい商品だった。本当に売れるのか懐疑的な意見も多く、そういう人たちを説得しながら進めていくのが大変だったと言う。
ところが、展示会などに出品をして、いざ販売を始めると予想以上の高評価を得た。
 
「まず商品を見た方が第一声で『かわいい!』と声をあげて反応してくださいます。そういったわかりやすく気にいってくださる反応を得られる経験がそれまでは少なかったので、とても嬉しかったことを覚えています。女性は新しいものに対してポジティブな好奇心から商品を手に取ってくれますね」(越前さん)
 
「多くの方が評価してくださり、グッドデザイン賞や日本文具大賞という賞もいただきました。売り上げは当初予測していた数量の2倍。改めてこのような事務用品を、こだわりのある人が自分のお金を出して買う、という実感を得られたのが大きな収穫でした。その実感を持って、以降、当社の中でも個人の方が気に入って買ってくださるような商品の開発を理解してくれる人が増えていきました」(平井さん)

小さなカラーギミックは細身のペンケースにも悠々と入る大きさ。文房具にこだわりをもって購入する人がほしいと思えるデザインが魅力だ。

 

そんな実績を作り上げた2人に今後の展開や商品開発への取り組みについて聞いた。
 
「道具である以上、機能はもちろん十分に必要なのですが、それだけでは機能で困っていない人には見向きがされない『受け身』の商品になってしまいます。今日の文房具は機能面のクオリティが高く、買い替えるほど困っている人は多くありません。商品を紹介したときに純粋に使ってみたい、持ってみたい、今すぐに必要ではないけどあったら便利、そのような『ものに出会って初めて生まれるニーズ』を喚起できる商品を開発して行けたら、と思います」(平井さん)
 
「やはり常に新しい価値を提案できる商品を作っていきたいです。商品開発には短くても2年ほどの期間が必要になります。今日企画したものができるのは2年後だと考えると、トレンドの真っ最中のものを作っても遅いのです。あらゆるものにアンテナを張り、時代を先取りしていくことが必要だと感じています。これからどうなっていくんだろう、こうなっていくといいな、そんな思いを実現できる、先を見られる企画者になっていきたいです」(越前さん)

終始和やかな雰囲気で話を聞かせてくれた2人。普段から新しい物や流行っている商品などについての情報交換に盛り上がることが多いという。


機能や品質は損なわずに、軽やかさや携帯性、デザインにこだわりたい――。
いずれのポイントにも妥協を許さず、人の手間をかけ、さらに女性の感性を活かしてニーズを先取りしたことが、カラーギミックが多くの人に支持された要因だろう。常に社会にアンテナを張り、時代を先読みして未来の姿を想い描くこと。品質とブランドに誇りをもち、徹底的に機能を追究していくこと。開発者のその絶え間ない努力があったからこそ、このヒット商品が生まれたに違いない。

 

提供:マックス株式会社 http://www.max-ltd.co.jp/

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